“南半球最大”の乳牛品評会(豪州・ビクトリア州)



ひとくちMemo

 酪農生産国の豪州にあって、唯一とされる乳牛品評会「インターナショナル・デイリー・ウィーク」が年1回、ビクトリア(VIC)州北部、人口わずか3千人弱の町、タチウラ(Tatura)で開催されている。1990年に始まったこの品評会は、年々、規模を拡大し、現在では“南半球最大”の乳牛品評会として位置付けられている。

 豪州では、近年、乳製品の国際的需給の高まりを背景に、乳牛の泌乳量の改良が広く注目されており、主要な酪農生産地域を抱えるVIC州をはじめ、国内各地からこの品評会に向けて優秀な乳牛が数多く集まっている。最近では、乳牛の改良に熱心な酪農家も多く、この品評会の審査結果に一喜一憂する姿が会場のあちらこちらで見かけられる。

 一方、豪州国内をはじめ国外からも、優秀な乳牛を求める来場者が数多く集う。品評会後に行われるオークションでは、高価で取引されるものも多い。今年のオークションでは、ホルスタインの雌牛が4万4千豪ドル(382万8千円:1豪ドル=87円)で落札されるなど、豪州にとっては記録的な高値での取引が相次いだ。



 延べ4日間にわたって行われる品評会では、各日、品種ごとの審査を行う。今年は、カナダ、アメリカ、フランス、日本から審査員を招くなど、豪州国内の乳牛の能力向上を目的に、国際的基準での審査を目差している。

 “毛並”のお手入れは、品評会での重要なポイント。審査会場の裏では、生産者がそれぞれに時間をかけて、バリカンで念入りに乳牛の毛並を整える姿がみられる。

 

 「最後の“ひとブラシ”が重要」とある生産者は語る。品評会出場の直前まで、時間を惜しむように家族総出で十二分に磨きをかける。

 

 緊張した面持ちでの出番を待ち。審査会場での乳牛の引き回しは、若者達の重要な役目。頭に自分の牛の番号をつけ、いかに牛を美しく見せるかが勝負どころ。

 乳牛の審査風景と真剣に見つめる購買者。出展リストを片手に、目についた牛に次々と印をつけていく。今年の品評会には、品種、性別、年齢別に分けられた乳牛1千頭が出展され、オークションでの平均価格は4,800豪ドル(41万8千円)を上回った。

 
 入賞した乳牛とその生産者。ある生産者は「品評会での入賞は、われわれにとって大きな励みとなるし、牧場の評価にも結びつく」と述べ、入賞の喜びを素直に表した。
 品評会の会場となるVIC州北部の町、タチウラ。期間中、この小さな街の人口に匹敵する人間が各地より集まり、町は一気に活気づく。近くの町には、乳牛をかたどった彫刻がいくつも設置され、訪れる人に酪農地域であることを強く印象付ける。

 マレー川流域に広がるVIC州北部一帯は、豪州の主要な酪農生産地帯。この小さな町にも2社の乳業工場が設置されるなど、地域にとって酪農は基幹産業となっている。
(シドニー駐在員事務所 横田 徹、井上 敦司)

元のページに戻る