中国向け取引を拡大させる豪州の酪農業


◇絵でみる需給動向◇


● ● ● チーズ生産へシフト ● ● ●

 豪州の生乳生産量は、2002/03年度の干ばつによる減産後、回復傾向での推移をみせているが、干ばつ前の2001/02年度の水準まで達するには、なお時間がかかると見込まれている。このような状況の中で乳業メーカー各社は、限られた生乳生産下において、より収益力を強化するため、高付加価値で輸出単価の高い製品へと生乳の仕向けを変化させつつある。特に最近、チーズ生産の増加が目立っており、また、輸出も拡大傾向にある。これは、従来の輸出先に加え、中国などにおける急激な需要拡大を背景に、世界のチーズ取引価格が高騰していることが一因として挙げられる。一方、チーズ生産に力を入れることで、脱脂粉乳やバターの生産、輸出量は減少傾向にある。1999/2000年度には脱脂粉乳(バターミルクパウダーを含む)、バター(バターオイルを含む)合計で38万トンを超えた輸出実績も、2004/05年度には24万トンまで落ち込んだ。

生乳生産量、チーズ輸出量、バターと脱粉輸出量

資料:DA
注:バターは、バターオイルを、脱粉は、バターミルクパウダーを含む。


● ● ● チーズ輸出、アジアでは中国が第3位の輸出先に上昇 ● ● ●

 国内の人口が2,000万人を上回る程度の豪州にあっては、乳製品生産量のおよそ半分が輸出されており、その3分の2が東アジア向けとなっている。

 豪州にとって、最大の乳製品輸出先は日本であるが、近年、経済成長による個人所得の上昇を背景に中国向け輸出の拡大が目立っている。デイリーオーストラリア(DA)によると、豪州から中国(香港を含む)へのチーズ輸出量は、2004/05年度が6,860トンと過去5カ年度で2.5倍を超える増加となっている。輸出量に占める割合(04/05年度)では、全体の3%とわずかであるが、アジア向けの輸出でみると、日本(10万6,729トン)、韓国(1万365トン)に次ぐ水準となっている。

中国向けチーズ輸出量

資料:DA


● ● ● 豪州からの乳牛の輸出も拡大傾向 ● ● ●

 また、乳製品のみならず、豪州から中国向けの乳牛の生体輸出も増加を続けている。中国では、国内生産を拡大するため、乳牛の輸入を増加させており、豪州はその最大の供給元となっている。DAによると、2005年の中国向け乳牛輸出頭数は3万2,500頭と年々、拡大傾向で推移している。最近では、豪・中国政府間で酪農分野における中国への技術協力を決定するなど、豪州の酪農乳業は、将来の巨大輸出市場確保に向けて連携を強めている。


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