「NATIONAL WESTERN STOCK SHOW」100周年記念大会



ひとくちMemo

 コロラド州の州都デンバーでは毎年1月、教育の促進、家畜改良、技術革新に加え、米国西部の古き良きライフスタイルを人々の記憶にとどめることを目的として、畜産の祭典である「NATIONAL WESTERN STOCK SHOW」が開催されている。

 当該祭典が最初に開催された1906年当初は、畜産関係者を対象とした会議や家畜取引が行われるのみであったが、1931年以降、カウボーイの仕事から派生したスポーツである「ロデオ」大会が催されるようになるなど、回を重ねるごとに一般の来場者向けのさまざまなイベントが加わり、開催日程も徐々に拡大されてきた。

 近年では、海外からも毎年約40カ国から600人以上の来場者が訪れ、ここ5年間の平均来場者数は約60万人に上る。また、平日には会場周辺で多くのスクールバスが見られるなど、毎年19,000人以上の児童が社会教育の一環として会場に訪れるそうだ。

 開始以来100周年を迎える今次記念大会は、1月7〜22日の16日間にわたり開催され、大会史上最大規模となった祭典を祝うため、ここマイル・ハイ・シティ(標高1マイル(1,600メートル)の)デンバーに約1万頭の家畜と72万人の人々が集結した。


今次記念大会のメイン会場となったデンバーコロシアム。1906年の大会開始当初は、テントで開催されていたそうだ。

Wild Western Showなど各種イベントが開催されたイベント・センターの壁には、「THE MOST MAGNIFICENT CREATURES ON EARTH(地球上で最も上等な家畜)」の文字が示された100周年を記念する看板が掲げられた。

 会場わきに併設されたストックヤード。今年は、共進会やセリなどに約6,000頭の牛が集結した。

 

 オークション・アリーナでは、連日、本大会主催のセリが開催され、見物客も含め毎回多くの人でにぎわった。セリは、中央のオークショナー(競売人)と最前列にいる3〜4人のリングマンにより進行され、競売人の上方に設置された電光掲示版には、牛の出場番号と生産者(荷主)のみが表示される。近年、米国の牛取引形態は、バイヤーとの直接取引が進展しているが、当該セリでは、家畜取引の原点が見られた。

 

チームローピング。2人組のカウボーイのうち、1人が馬の上から逃げる子牛の頭周辺に、もう1人が後ろ両足にロープをかけるまでのタイムを競う。プロロデオの中では、唯一のチーム競技であり、いかにもカウボーイの仕事ぶりを思い起こさせる競技でもある。
一言でロデオといっても、さまざまな種目と細かなルールがある。写真は、ブルライディング。ロデオの中でも、最も危険かつ人気のある競技である。重さ1トンの巨体と角を誇る雄牛(ブル)に片手一本で乗り、8秒間乗り切る競技。通常、ロデオ大会の一番最後を飾る。

 

会場内では、牛肉や豚肉などのステーキ、ハンバーガー、BBQサンドウィッチ、ホットドッグなどを販売する出店が多数立ち並び、米国中西部の食文化の一端が垣間見られる。写真左はTurkey Legのバーベキュー。写真右は、バッファローステーキのハンバーガー。
セリに出場するため、カンザス州より十数頭のヘレフォードを帯同してきた生産者は、記念大会の雰囲気を楽しんでいた。写真は、24カ月齢の雄牛(Bull)で、体重は約1,800ポンド(816キログラム)とのことである。

米国中西部を象徴するロングホーン種は、見物客の人気も高い。


共進会で優勝した5歳雄のラマと生産者の少女。このほか、羊やアルパカなど毛用の家畜も多数共進会に参加した。

 

共進会出場前の舞台裏の様子。会場周辺では、生産者が共進会へ出場させる家畜を入念に手入れする光景が見られた。

 
会場内では、カウボーイハット、ジャケット、ベルトなどカウボーイ用品をはじめ、ソファー、カーペット、小物類その他多数の革製品や牛角の装飾品などが展示・販売され、米国中西部の雰囲気を盛り上げた。

最新の家畜用運搬車や、給餌柵など牧場用の飼育器具なども展示・販売され、関係者は熱心に説明を受けていた。
 

羊や子牛など小家畜と子供たちの触れ合いコーナーは、休日には長蛇の列ができるほどの人気。


ブラーマン種の背中の上での記念撮影。こぶのある背中に乗った子供たちは大喜び。

(ワシントン駐在員事務所 唐澤 哲也、犬飼 史郎)

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