EU農相理、バイオマス行動計画について議論


バイオマス行動計画をメインの議題に

 EUの農相理事会は1月23日、欧州委員会が発表したバイオマス行動計画の農業に関する分野について意見交換を行った。

 欧州では、本年初めに起きた、ロシアからウクライナへの天然ガス供給停止に伴い、欧州諸国へのガス供給が減少する事態が発生し、また、最近の原油高も重なり欧州の化石燃料に依存するもろさが明るみに出た。このため、同理事会議長(2006年1〜6月の議長国は、オーストリア)は、同行動計画が、化石燃料への依存度を減少させ、温室効果ガスの放出量を削減し、農村地域での経済活動を促進することを可能にするものとして、同理事会のメインの議題として取り上げることとした。


昨年12月行動計画を公表

 欧州委員会は2005年12月7日、林業、農業、廃棄物原料からのエネルギー利用を増加させることを目的としたバイオマス行動計画を採択し、公表した。この行動計画は、20以上の項目から構成され、この大部分の対策を2006年から実施することとしている。

 本行動計画では、輸送、暖房、電力生産でのバイオマス利用を促進するための燃料基準の改善、木材や廃棄物から液体燃料を製造する研究開発への投資などが含まれている。また、欧州委員会は、暖房用に再生可能なエネルギーの利用を促進するためのEU規則に取り組むことも挙げている。

 現在のEUのエネルギー市場におけるバイオマス燃料のシェアは、0.8%にすぎない。本計画は、これを2010年までに5.75%に引き上げることを目標に掲げている。また、欧州委員会は、本行動計画の対策の実施により、農業の集約化や域内の食品生産に大きな影響を与えることなく、バイオマスの利用が、2003年の石油換算で6,900万トンから2010年には同1億5千万トンに増加すると見込んでいる。それに加え、温室効果ガスの排出を、二酸化炭素換算で年間2億900万トン減少、直接雇用を25〜30万人創出、輸入エネルギーへの依存度を48%から42%に削減することを見込んでいる。


畜産副産物からの生産のための法体系を再検討

 EUでは、食用に向かない畜産副産物は、特にバイオガスやバイオディーゼルのエネルギー生産資材として再生利用されている。科学や技術の進歩により、この分野では、新しい生産方法の開発が進められている。本行動計画において欧州委員会は、公衆・動物衛生の保護を高いレベルで維持しながら、新しいエネルギー資源として受け入れるために、この分野での新たな生産方法も承認する法体系を再検討することとしている。


理事会での議論結果

 欧州委員会から本行動計画に関する説明の後、本件に関する議論が行われた。その主な概要は次のとおり。

・本行動計画により、域内での再生可能なエネルギー供給の確保、化石燃料への依存度を削減、農村地域活動の維持などについて、前向きな影響が見られることを歓迎

・バイオプロダクツ、バイオプラスティック、畜産廃棄物を含む異なるタイプのバイオエネルギーの利用の重要性を強調

 また、同議長は、本年5月に予定している非公式農相理事会においても、バイオマスの議題を取り上げることとしている。


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