イギリス産牛肉の輸出禁止措置を解除


◇絵でみる需給動向◇


● ● ● 96年に施行された輸出禁止措置を解除 ● ● ●

 イギリスでは96年3月、他のEU加盟国よりBSE患畜の発生割合がはるかに高いとして、生体牛および牛肉の輸出禁止措置が施行された(特定の生体牛の輸出禁止については89年に導入済)。その後のBSE対策の取り組みの中で、99年8月から一定条件を満たす牛肉などの輸出が認められたものの、その数量は限定的であった。しかし、2005年3月には、(1)欧州食品安全機関(EFSA)が同国の成牛100万頭につきBSE患畜が200頭を下回ったのを確認したこと、(2)EU食品獣医局(FVO)が2005年9月28日、同年6月に実施した同国におけるBSE対策の調査報告書を発表し、ほとんどの分野で満足のいく経過と結論付けていたこと−から、フードチェーン家畜衛生常設委員会は3月8日、イギリス産の生体牛および牛から生産されるすべての製品の輸出禁止措置を解除する欧州委員会の提案を承認した。今後、この内容については欧州議会による調査および欧州委員会の手続きを経て、4月下旬から5月上旬にかけて採択の後、施行される予定である。

 なお、今回の承認の対象となるのは、生体牛については96年8月1日(肉骨粉の給与禁止措置開始日)以降に生まれたもの、牛肉などについては2005年6月15日(FVOによる検査終了日)以降に生産されたものとなっている。


● ● ● 輸出禁止措置以前の輸出は大部分がEU域内向け ● ● ●

 イギリスからの牛および牛肉輸出量については、輸出禁止措置がとられる前の1991〜95年における年平均の生体牛は41万8頭、牛肉は18万5千トンであった。これに対し、輸出禁止後の2001〜05年の年平均は生体牛がゼロ、牛肉は6千トンと大幅に減少している。

 イギリスの生体牛および牛肉の輸出先は従来、EU域内向けに偏っており、95年以前は生体牛のほぼすべて、牛肉の8割以上が域内向けとなっていた。生体牛では、フランスおよびオランダ向けが全体の5割(12万2千頭)および4割(16万2千頭)を占め、牛肉では、第1位のフランス向けが56.8%(8万5千トン)、第2位のアイルランド向けが11.8%(1万8千トン)および第3位のイタリア向けが11.3%(1万7千トン)で、上位3カ国で全体のほぼ8割を占めている。

イギリスの生体牛および牛肉の輸出状況

資料:イギリス関税局
注意:それぞれの値は5年間の平均


● ● ● 牛肉生産量の増加で、輸出増加を期待 ● ● ●

 イギリス環境・食糧・農村地域省(DEFRA)によると、2001年以降のイギリスの牛肉(子牛肉を含む)生産量は一貫して増加しており、30カ月齢以上の牛の処分対策(OTMS)が終了した2005年の生産量は、2001年と比較して18.3%増の76万3千トンと大幅に増加している。
こうした中、今後のイギリスの輸出動向はまだ不透明な部分が多いものの、DEFRAは、前段に述べた従来の輸出状況を勘案すると、輸出禁止措置の解除により今後は域内に対する輸出への期待が高まるとしている。


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