家きん肉部門に対する新たな市場政策の検討を表明 ● E U


 フィッシャー・ボエル委員(農業・農村開発担当)は3月20日、EUの農相理事会において、鳥インフルエンザ発生により低迷する家きん肉の需要に対処するため、家きん肉部門に対する新たな市場政策を検討することを表明した。


家きんにおける共通市場政策

 現在、家きん肉における共通市場政策としては輸出補助金があるが、牛肉や豚肉などで講じられる民間在庫補助のような市場政策は用意されていない。

 最近のEU域内・外における鳥インフルエンザの発生により、家きん肉の消費が低迷し、域内在庫が大きく増加している。このような中、欧州委員会は、家きん肉に関する唯一の市場政策として輸出補助金単価の引き上げにより対応してきた。例えば、冷凍鶏肉の輸出補助金については、本年初めには1キログラム当たり24ユーロ(3,456円:1ユーロ=144円)であったものが、これまで3度の引き上げにより、現在、同40ユーロ(5,760円)と大幅に増額されている。しかしながら、域外の多数の国が疾病の発生を問題とした衛生対策として家きん肉の輸入停止措置を講じる中、この輸出補助金単価の引き上げだけでは消費減退や価格低迷に対する対応として限界があると判断した。


具体的な対策の内容は未定

 今回の農相理事会では家きん肉部門に対する新たな市場政策について、現時点では具体的な内容の提示は行っていない。事案ごとに、また、すでに各加盟国で実施されている対策なども考慮して検討を行うとしている。

 その検討方向については、現行の共通市場政策の拡充が最も適切で早急に対応できる解決策であるとしている。なお、これに伴い生じる財政負担については、EUが50%を負担するとしている。ただし、家きん肉をめぐる状況は各加盟国で異なるとして、新たな対策は必要とする加盟国のみを対象に実施するとしている。

 フィッシャー・ボエル委員は、農相理事会終了後の記者会見において、個人的な意見と断った上で、新たな市場政策として、種卵や初生ひなの処分対策を例示している。現状への対処としては、まず生産を抑制することが必要であるが、仮にこのような対策を講じたとしても、牛や豚に比べ生産サイクルの短い家きんについては今後の生産への影響も少ないとしている。

 その後、欧州委員会は3月29日、市場対策への新たな財政支援対策案を公表した。これは、現在の市場低迷は疾病の発生を原因とするものであるとして、疾病対策の適用を拡大し、各国が状況に応じ実施する特別な市場対策に対し、EUが50%の補助を行うものである。

 欧州委員会は、4月末までに本提案に対する欧州議会および欧州理事会の承認を取り付け、その後、各加盟国からの政策提案を受け付けたいとしている。


EUにおける鳥インフルエンザの発生現状の確認および今後の警戒について呼び掛け

 キプリアヌ委員(保健・消費者保護担当)は3月20日、農相理事会において、EUやその周辺地域における鳥インフルエンザの発生状況などを説明した。

 これまでのところ、EUにおいてH5N1型の高病原性鳥インフルエンザの野鳥での感染が確認されたのは11カ国(ギリシャ、イタリア、スロベニア、オーストリア、ドイツ、ハンガリー、フランス、スロバキア、スウェーデン、ポーランド、デンマーク(注:この後、3月27日にチェコ、4月5日にイギリスで確認。4月10日現在13カ国))であり、家きんへの感染が確認されたのはフランスとスウェーデン(注:この後、4月5日にドイツで確認。4月10日現在3事例)の2事例のみとなっている。

 また、イスラエルの七面鳥農場において高病原性鳥インフルエンザの感染が確認されたことから、同国からの生きた鳥や非加熱の家きん肉製品などの輸入を一時停止したことを説明した。

 さらに、エジプトやナイジェリアなどのアフリカ諸国で感染が確認されており、今後、アフリカから欧州に向けて渡り鳥が飛来する季節となることから、EU域内における感染拡大を防止するためには引き続き警戒が必要であると呼び掛けた。


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