再発した高病原性鳥インフルエンザ ● マレーシア


再度の高病原性AI発生

 マレーシアでは北部のケランタン州において、2004年8月に初めて高病原性インフルエンザ(AI)の発生が確認された。これに対し、家きんの殺処分などの対策が採られ、2005年1月に政府による清浄化宣言が行われた。その後1年以上新たな発生報告はなかったが、今年2月に首都クアラルンプール近郊でAIの再発が確認された。日本は同国におけるAI発生まで、年間3千トンを超える家きん肉製品を同国から輸入していたが、発生後輸入を停止し、現在に至るまで輸入は再開されていない。


拡大する発生地域

 その後、3月16日にマレーシア獣医畜産局(DVS)はペラ州においてもAIウイルスを確認し、また、直近では3月20日にペナン州で発生した旨を家きんなどの主要輸出先であるシンガポールの食品獣医庁(AVA)に通告した。

 現在までのところ、人への感染の報告はされていないが、政府は、発生地点の半径1キロメートル以内の家きんの殺処分を行うとともに監視体制を敷いた。


家きん肉などの価格が下落

 マレーシア畜産農家協会連合(FLFAM)によると、ブロイラーの生産者販売価格は、昨年12月下旬の1キログラム当り4リンギ(128円:1リンギ=32円)が今年の3月14日には同3.2リンギ(102円)になり、さらに3日後の3月17日には同3リンギ(96円)に下落したとしている。同様にブロイラーの小売価格も同じ期間に5リンギ(160円)が4.2リンギ(134円)に、そして4リンギ(128円)に下落している。一般に、12月末の価格は通常月よりも高めであるが、直近の生産者販売価格の下落は3日間で約5%下落しており、FLFAMによれば、AIによる需要の減退が原因の一つであるとしている。


アヒルの供給でシンガポールへの影響

 シンガポールは2005年に鶏を3千8百万羽、アヒルを660万羽マレーシアから輸入したが、今年2月からのAIの一連の再発生を受けて、次のように対応した。

 2月20日、セランゴール州でのH5N1亜型ウイルスの検出をDVSから受けたAVAは、同州からの家きんおよび卵の輸入を停止した。AVAは農場認定制(海外駐在員情報645号参照)を行っており、実際に輸入停止の対象となるのは1採卵養鶏場で、当該養鶏場からの輸入数量はマレーシアから輸入する鶏卵全体の5%にすぎないため、国内における鶏卵需給に与える影響はわずかであるとした。

 3月16日には、DVSからペラ州で死亡した放し飼いの鶏からAIウイルスが検出されたとの報告を受け、同日付で同州からの家きんおよび家きん製品の輸入を停止した。ペラ州はマレーシアのアヒルの約7割を飼養し、1日当たり2万羽をシンガポールに輸出しているが、これはシンガポールで消費されるアヒルの86%を占めていた。AVAは、ジョホール州などからのアヒルの輸入が可能としながらも、輸入停止の影響を最小限にするため、オランダや米国からの冷凍アヒル肉の輸入の増加に努めるとした。

 また、3月20日にAIの発生が確認されたペナン州に関しては、AVAの認定養鶏場はなく、シンガポールへの影響はないとしている。


対日EPAでアヒル肉の関税撤廃

 日本はマレーシアでAIが発生する以前の2003年には、同国から冷凍アヒル肉を2,216トン、2004年も輸入停止前に1,052トン輸入していた。昨年12月に日本は同国と経済連携協定(EPA)を締結しており、その中で、冷凍アヒル肉は協定発効後、即時関税撤廃の対象となっている。

 このため、同国におけるAI清浄化は、アヒル業者にとって日本への輸出を再開し、輸出量を増加させるチャンスとなっている。


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