米国、高病原性鳥インフルエンザ対策を強化


渡り鳥に対する監視を拡大

 ジョハンズ米農務長官は3月20日、ノートン米内務長官およびレビット米厚生長官とともにワシントンDCで会見し、「渡り鳥に関する高病原性H5N1型の鳥インフルエンザ早期発見システム−米国省庁連携戦略計画」を確立し、これから到来する春の渡り鳥の移動シーズンに向け、アラスカ州などにおける渡り鳥調査を強化すると公表した。

 当該計画は、米国内の家きん、野鳥および国民の保護を一層確実なものとするため、これまで連邦政府、州政府や地方機関において実施されてきた取り組みを拡大および統一するものである。

 当該計画では、渡り鳥における鳥インフルエンザウイルスの早期発見のため、以下の5つの対策を柱としている。

・野鳥における疾病の発生および罹患状況に関する調査
・生きた野鳥の監視の拡大
・狩猟された鳥の監視
・放し飼いされる家きんなどのおとり動物の利用
・野鳥の生息地から鳥の排せつ物や水などの抽出検査の実施

 ジョハンズ長官は、「渡り鳥の監視を強化することは、鳥インフルエンザウイルスのまん延、特に米国内の家きんにおけるまん延を抑制するためにも重要となる早期発見の可能性を増加させることとなる。USDAは、高病原性の鳥インフルエンザを発見するための能力をさらに強化するため、多くのパートナーとともに広範囲にわたる対策を実施していく」と述べた。


アラスカ野鳥などに対する検査に重点

 アラスカ州は、渡り鳥の飛行経路の交差点となっているため、現在、アジア、アフリカ、欧州諸国などで影響を及ぼしている高病原性のH5N1型ウイルスの脅威が渡り鳥を通じて北米へまん延する場合、当地で発見される可能性が高いと考えられている。このようなことから、当該計画では、アラスカ州をはじめ、太平洋岸、太平洋諸島に重点を置き、優先的な検査体制を促すとともに、中央地域、ミシシッピ川流域および大西洋岸の飛行経路も調査するとしている。

 米国では、97年に香港で初めて高病原性のH5N1型ウイルスが発見されて以来、渡り鳥の監視を実施している。米国農務省(USDA)は98年以降、1万2千羽以上のアラスカ州に飛来する渡り鳥を検査し、また、2000年以降、大西洋岸に飛来した約4千羽の渡り鳥を検査した結果、H5N1型ウイルスは確認されなかった。

 さらに、2005年夏以降、米国内務省(DOI)はアラスカ州政府とともに、太平洋岸における1,100羽以上の渡り鳥から抽出検査を実施している。

 ノートン長官は、「渡り鳥がH5N1型ウイルスのまん延において、どのような影響を与えるかは明確ではないものの、渡り鳥が当該ウイルスを北米に伝える可能性が存在するため、われわれにはその可能性に対処する責任がある。今後、渡り鳥で当該ウイルスが検出されたならば、今回の計画は、農業、公衆衛生および野生生物界へ早期の警告を提供するための手段となる」と述べた。

 USDAなどは、当該計画において2006年に7万5千羽から10万羽の野鳥からサンプルを採取する予定である。また、米国内でリスクが高いとされる水鳥の生息地から水や鳥の排せつ物のサンプル5万個を採取する予定である。

 野鳥を監視する計画は、昨年11月にブッシュ米大統領が公表した世界的な鳥インフルエンザのまん延に関する国家戦略の一部であり、同大統領は、当該計画の実施のために、鳥インフルエンザ対策に関する緊急補正予算のうち2,900万ドル(34億2千万円:1ドル=118円)を割り当てた。


地方段階における対策の必要性

 一方、レビット長官は、「科学者たちは、H5N1型ウイルスが人から人へ感染することを懸念しており、世界的な新型インフルエンザの流行を誘発する可能性がある」と警告した。現在、米国厚生省(HHS)は、国内外における疾病発生の監視、ワクチンや抗ウイルス剤の開発および備蓄、州・地方レベルでの対策の策定および一般市民への情報提供など多角的な取り組みを実施している。

 同長官は、今後、多くの地域において疾病が同時に暴露したことを想定し、地方段階におけるまん延防止に関する対策を要求するとともに、HHSは今後、地方の取り組みを支援するため、50州すべてにおいて疾病のまん延防止に関するサミットの開催を計画しているとした。


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