食料政策上重要な養豚振興 ● フィリピン


第5回全国養豚振興大会を開催

 フィリピンのミンダナオ島北部のカガヤンデオロ市において4月末に開催された第5回全国養豚振興大会(NHCTE)で、パンガニバン農務長官は開催のあいさつを行い、養豚振興の重要性を強調した。これによると、2005年の農水産生産額8,155億ペソ(1兆7,941億円:1ペソ=2.2円)のうち、養豚部門が1,260億ペソ(2,772億円)と15%を占め、耕種部門の米の1,548億ペソ(3,406億円)に次ぐ規模となっており、同国の農業において重要な位置を占めるとともに、政府も豚の改良や疾病対策の拡充などを行い、養豚振興に力を入れることにより将来的には海外市場への進出も図りたいと述べた。また同国内においては、人口増による食肉消費の増加に対応するためにも養豚の振興が重要となっている。


豚肉は最も消費される食肉

 農務省農業統計局(BAS)によれば、2005年1月時点の同国の豚飼養頭数は、約1千2百万頭であり、そのうち農家の庭先での飼養頭数は77%に当たる約926万頭で、残りの23%に当たる288万頭が企業的な飼養形態となっている。また、国連食糧農業機関(FAO)の2003年のデータによれば、同国の食肉消費の約6割が豚肉となっており、最も消費される食肉となっている。なお、国民の多くはカトリック系キリスト教徒で、豚肉に対する忌避意識の高いイスラム系人口が少ないため、東南アジアにおいてベトナムに次ぐ飼養頭数となっている。


効率的な人工授精による養豚振興

 養豚振興の重要性が高まる中で、政府の方針は、人工授精の普及などによる優良豚の増殖を目指すとしている。同国における豚への人工授精は、1930年代に始まり、1950年代には農務省畜産局(BAI)が本格的に取り組みを始めた。近年では全国人工授精繁殖センター(NABC)や大学での研究が進められ、国際養豚訓練センター(ITCPH)により養豚技術の改良や人工授精師の育成が行われている。

 政府が人工授精の普及に力を入れる理由としては、効率的に優良な遺伝子を多くの生産者に提供できることのほかに、小規模農家が雄豚を飼養する経済的負担を軽減することが挙げられている。

 また、人工授精の普及と平行して、政府は、優良種豚の選抜を進めるため、2000年に政令22号を定め、繁殖養豚農家認定制度を開始した。優良豚の基準や認定農家の条件に関しては、官民の養豚関係の組織がこれを定めることとなっている。この政令はその後何度か改定され、登録要件の整備や認定料などに関して追加規定されている。


幅広いITCPHの機能

 このように同国の養豚振興に関しては、人工授精技術をはじめとして養豚業に関係する幅広い人材の育成が求められるが、このことに対応するため、約20年前に設立されたのがITCPHである。同組織は、中央および地方政府の関係者をはじめ、農家、私企業の担当者など、幅広い養豚関係者を対象に、人工授精技術の普及のほかに、飼料給与、台帳記録、疾病対策、ストレス管理、販売、農場運営などの指導を行うほか、養豚に関する情報のネットワーク化を図るなど、総合的な活動を行っている。


元のページに戻る