米国、再生可能燃料政策とその影響に関する議論が活発化


米畜産生産者団体、バイオ燃料産業の拡大に対する懸念を表明

 全国豚肉生産者協議会(NPPC)、全国生乳生産者連盟(NMPF)、全国鶏肉協議会(NCC)、全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)およびアメリカ食肉協会(AMI)など米国の主要畜産生産者団体は1月18日、ジョハンズ米農務長官に対し、バイオ燃料産業の拡大が米国の畜産業界全体に及ぼす影響に関する調査を実施するため、米国農務省(USDA)内にワーキング・グループの設置を要求する書簡を送付した。

 この書簡では、農業分野における新たな科学技術の開発に注目が集まる一方で、畜産生産者の多くは、トウモロコシ需要の拡大による価格面への影響や、端境期には安定的な飼料の入手が困難になるのではないかという不安を抱えていることなどが述べられている。

 主要生産者団体は、これら生産者の懸念が、家畜飼養頭数の減少など畜産業界全体の規模縮小を招き、業界内におけるさらなる統合問題の引き金となる可能性があることを警告した上で、生産者の経営に関する判断材料として活用するため、エタノール生産の拡大が畜産業界にもたらす経済的影響の分析を早急に実施するよう訴えた。


ブッシュ米大統領、一般教書演説でエネルギー供給の多様化を表明

 このような中、ブッシュ米大統領は1月23日夜に行った2007年の一般教書演説の中で、米国内におけるエネルギー供給の多様化を推進し、中東諸国に対する石油依存度を引き下げる目標を表明した。具体的には、風力発電など石油に依存しない発電方法への転換や、木材チップなどを原料とする新たなエタノール生産技術の開発などを推進するとともに、2017年までに、再生可能燃料および代替燃料の使用基準を現行目標の約5倍となる350億ガロン(1億3,300万キロリットル)まで引き上げる方針を掲げた。

 また、USDAは24日、2007年農業法に関する政府提案の一環として、再生可能燃料、特に、セルロース燃料の調査・研究および生産振興に対し、新たに16億ドル(1,904億円:1ドル=119円)の財政支援計画を公表した。この提案は、同大統領の今後10年間で、ガソリン消費を2割削減する目標を支援するためのものである。


米上院議員、新たなバイオ燃料法案を提出

 一方、米議会においても、同上院農業委員会委員長であるハーキン議員ら5名の超党派上院議員が1月4日、米国内における再生可能燃料の使用拡大を目的とした「バイオ燃料安全保障法案」を提出するなどバイオ燃料に関する議論が活発化している。

 同法案では、再生可能燃料使用基準を2020年までに年間300億ガロン(1億1,400万キロリットル)、2030年までには同600億ガロン(2億2,800万キロリットル)に引き上げることなどを求めており、同大統領が一般教書演説の中で掲げた水準を上回るものとなっている。また、同法案の提唱者の一人であるルーガー上院議員は、代替燃料の供給面に関して、「議会は、さらに、代替燃料の生産振興のため、新たに原油価格に連動した租税減免措置を講ずることになるだろう」とも述べている。

 米国のバイオ燃料産業が拡大の一途をたどる中、次期農業法の議論にも多大な影響を及ぼすこととなるエネルギー政策については、今後の動向がさらに注目される。


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