−OECD-FAO報告から−
穀物価格、大幅な後戻りは見込めないが、中・長期的には落ち着き


◇絵でみる需給動向◇

 経済協力開発機構(OECD)と国連食糧農業機関(FAO)が7月4日に公表したOECD-FAO農業観測(Agricultural Outlook 2007-2016)によると、米国におけるバイオ燃料生産の急増がもたらす空前のトウモロコシ需要は、粗粒穀物市場の構造的な変化を進行させ、世界の多くの農産物価格を上昇させる。同報告書によれば、最近の農産物価格の上昇は、豪州など小麦生産地帯における干ばつや低水準の在庫が原因とし、バイオ燃料との関係については、今後の原油価格、各国の政策の進展と技術開発などによるバイオ燃料産業のさらなる発展いかんによるとした上で、向こう10年間にわたる穀物市場への影響は徐々に緩和するとしている。


● ● ● 10年後の生産量は2割増−価格高が増産のインセンティブ− ● ● ●

 農業観測によると、世界の粗粒穀物生産量は、2006年の9億8,100万トンから2016年には、2割増の11億8,400万トンと見込まれている。これは、低水準の在庫および高水準の価格がインセンティブとなり、穀物の作付面積が拡大することによる。すなわち、豪州、カナダおよび米国では他作目からの作付転換が行われるとともに、EUでは休耕地を、米国では土壌保全保留計画地を、また、中南米諸国などの発展途上国では新規の耕作地を拡大することで作付面積が増えると予測されている。

 小麦や米を含む穀物全体の輸出量は、この数年間を見ると、豪州の深刻な干ばつやEU、米国の収穫減などから、主要輸出国で実質的に減少しているが、今後2016年までは年率1.5%近くでの成長が見込まれ、世界の貿易量は回復するとしている。


● ● ● 穀物価格、大幅な後戻りは見込めないが、中・長期的には落ち着き ● ● ●

 穀物の国際価格は、天候不順による生産量不足と在庫の減少が世界市場における供給をタイトにした結果、大幅に上昇してきた。農業観測によると、価格は、今後需給が緩和されるとして、2016年に向け低下が見込まれている。しかし、直近と今後の10年間の価格を比べると、エタノール生産向けのトウモロコシ需要に加え、発展途上国における食料需要が拡大することから、中・長期的には落ち着くが高値水準にとどまり、大幅な後戻りは見込まれてない。


● ● ● 米国エタノール向け、10年後は米国トウモロコシ生産量の32%を占める ● ● ●

 2016年の米国エタノール生産量は、2006年の2倍が見込まれている。トウモロコシ換算では、2006年のエタノール向けトウモロコシは米国生産量の2割(5,500万トン)であるが、2016年は同32%(1億1,000万トン)に増加する。一方、バイオディーゼル向け大豆油の生産は、原料高騰による利益率の低下から限定的で、2007年の200万トンから、2011年に230万トンに増加するが、その後2016年まで増加は見込まれないとしている。

 EUのバイオ燃料は、歴史的に主になたねを用いたバイオディーゼルで、バイオディーゼル向けのなたねなど油糧種子は、2007年の1,000万トンから2016年には2,100万トンへの増加が見込まれている。また、徐々にではあるが、小麦やトウモロコシを用いたエタノールがEU市場に出回るとしており、小麦は12倍に増加することが見込まれ2016年には約1,800万トン、トウモロコシは同520万トンに達すると見込まれている。

 中国のエタノール生産は着実に成長し、2006年の15億リットルから2016年には約38億リットルが見込まれている。燃料エタノール生産は、トウモロコシ以外の原料が使用され、または、現在その研究が進められているものの、大部分はトウモロコシが原料となるものとみられる。燃料エタノール向けトウモロコシは、2006年の350万トンが、2016年には900万トンに増加するとしている。

世界の粗粒穀物需給


元のページに戻る