2007-13年の加盟国における農村開発計画の承認を開始(EU)


加盟国の農村開発計画を初めて承認

 EUの農村開発政策は、農林業の近代化、環境の保護、農村地域における雇用の創出などを目的としており、共通農業政策(CAP)においては、生産者への直接支払いや農産物の市場政策と並ぶ主要政策分野となっている。2003年のCAP改革においては、この農村開発政策をさらに拡充するため、直接支払いの一定割合を農村開発予算に振り向ける「モジュレーション」を導入するなど、農業分野の中でもとりわけ重点的に実施することとされている。

 この農村開発政策の2007−13年のEU全体の予算である総額776億6,277万ユーロ(約12兆9,697億円:1ユーロ=167円)については、2000−06年の予算実績やEU全体の開発速度に照らして開発が遅れている地域数などを加味して、昨年9月に、同期間の各加盟国への配分額が決定している(「海外駐在員情報(平成18年9月19日号)」参照)。

 この予算実行に際し、各加盟国は農村開発事業に関する実施計画を作成、各加盟国の代表者から構成される農村開発委員会で協議の上、最終的には欧州委員会による正式な承認が必要となっている。

 農村開発委員会は5月23日、チェコ共和国およびスウェーデンから提出されていた2007−13年の農村開発計画を協議し肯定的な評価を行った。今後、数週間のうちに欧州委員会による正式な承認が予定されるが、これは加盟国から提出された計画に対する初めての承認となる。


農村開発計画の概要

 2007−13年の農村開発政策の実施に当たっては、各加盟国は次の4つの事業を組み合わせて実施することとなっている。

(1) 農業・林業の競争力の強化
 ・ 農家への職業訓練やアドバイスを通じた、人的資本の育成
 ・ 青年の就農支援
 ・ 農業を行うためのインフラの整備
 ・ 食品品質制度への参加、EU基準への適応の支援
 ・ 新規加盟国の兼業農家の競争力を高めるための支援 など

 これらの対策の実施については、各加盟国の農村開発予算の最低10%を使用することとし、EUの補助率は最高50%まで(重点地域では最高75%)となっている。

(2) 国土保全および環境改善
 ・ 中山間地域の条件不利地域の農家に対する補助金の支払い
 ・ 農業分野での環境対策に対する支援
 ・ 動物福祉を改善するための支払い など

 これらは、農村地域の自然や景観を保護し、価値を高めるために実施するもので、各加盟国の農村開発予算の最低25%を使用することとし、EUの補助率は最高55%まで(重点地域では最高80%)となっている。

(3) 生活の向上と農村地域経済の多様化の促進
 ・ 農家の農業活動以外への取り組みへの支援
 ・ 小規模事業の創出を支援
 ・ グリーンツーリズムの奨励
 ・ 農村の再編
 ・ 女性の再雇用を支援するための保育所などのサービス など

 これらの対策の実施については、各加盟国の農村開発予算の最低10%を使用することとし、EUの補助率は50%まで(重点地域では最高75%)となっている。

(4) 地域の団体が主体的に取り組む事業(LEADER事業)に対する助成
 農村地域の人々やグループが、農村地域の持続的発展のための事業を実施することに対する助成。これらの対策の実施については、各加盟国の農村開発予算の最低5%を使用することとしている。


両国計画の重点は、国土保全および環境改善

 チェコ共和国の2007−13年の農村開発予算は約36億1千5百万ユーロ(約6,037億円)で、このうちEUの補助率は約78%となっている。事業別では、前段の(2)国土保全および環境改善に約55%の予算を使用する計画となっており、特に土壌浸食対策や農地の持続的利用などを通じた地表や地下水源の保護などに重点を置くこととしている。

 また、スウェーデンの同予算は約39億1千7百万ユーロ(約6,541億円)で、このうちEUの補助率は約47%となっている。事業別では、チェコ共和国と同様、(2)国土保全および環境改善に最も多くの予算(約71%)を使用する計画となっており、特に魅力的な農村景観や地方での生活の保全・発展、地域資源の効率的な活用、環境負荷の少ない持続的な農業生産の確立などに重点を置くこととしている。

 ほかの加盟国の計画についても今年中に順次承認される見込みとなっており、7月5日現在、イタリア、フランス、フィンランド、オランダの計画が承認されている。


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