EU農相理、「子牛肉」の表示は8カ月以下とする規則に合意


 EUの農相理事会は6月11日、2006年9月に欧州委員会より提案された12カ月齢以下でと畜された牛から生産される牛肉の表示に関する規則に合意した。これにより、「子牛肉(veal)」と表示できる牛肉は、8カ月齢以下でと畜された牛から生産された牛肉のみとなる。12カ月齢以下の牛から生産される牛肉の表示区分を明確化する目的は、市場における透明性の確保および市場機能の向上、消費者に対する正確で分かりやすい情報の提供を目指すこととしている。


「子牛肉」の表示区分の明確化の背景

 EUでは、食肉用として12カ月齢以下でと畜される牛の飼養方法は、大きく2種類に分かれる。一つは、飼料として主に牛乳や乳製品を与え、8カ月齢以下でと畜する方法で、ほとんどのEU加盟国で行われている。この方法で飼養された牛肉は非常に柔らかく、一般に高級肉として取り扱われている。もう一つは、飼料として主にトウモロコシなどの穀物を与え、10カ月齢以上でと畜する方法で、主にオランダ、デンマーク、スペインなどの少数の国で行われている。

 今まで、これらの異なった飼養方法で生産された牛肉は両方とも「子牛肉」と表示されており、特に飼料の種類やと畜時の月齢による区分がされていなかった。

 しかし、これらの牛肉の価格は前者が後者より高く、キログラム当たり約2〜2.5ユーロ(334〜418円:1ユーロ=167円)の価格差があることや、現行の表示方法では両者の区別が付かず消費者に誤解を与える懸念があることから、加盟国より欧州委員会に対して、12カ月齢以下の牛から生産された牛肉、特に「子牛肉」の表示に関する定義を明確にすべきとの意見が出されていた。


「子牛肉」の表示は8カ月齢以下の牛から生産された牛肉にのみ使用

 今回の採択された規則では、12カ月齢以下の牛から生産された牛肉の表示方法について以下のとおり明確化されている。
 
・8カ月齢以下の牛:と畜場において「V」マークが付され、「veal(子牛肉)」またはそれに該当する各国の公用語の名称で表示

・8カ月齢超、12カ月齢以下の牛:と畜場において「Z」マークが付され、「rosé veal」または「若い牛から生産された牛肉」に該当する各国の公用語の名称で表示

 8カ月齢超、12カ月齢以下の区分の表示は、各国の文化や伝統を勘案した名称で表示することができ、例えば、英国では「beef」、アイルランドでは「rose beef」と表示される。また、これ以外の製品情報の表示は、現行の牛の個体登録、牛肉および牛肉製品の表示に関する規則に従って表示するとしている。

 なお、この規則による表示方法の適用は、表示の一貫性、公正な市場競争を行う観点から、EU域外から輸入される牛肉も対象となる。


EU最大の生産・消費国 フランスの反応

 EUでは、年間約80万トンの子牛肉が生産されている。主な生産国としては、フランス(EU合計の30%)、オランダ(同26%)、イタリア(同18%)、ベルギー(同7%)、ドイツ(同6%)となっている。また、子牛肉の消費の大部分がフランスとイタリアで消費されており、EU全体の約70%を占めている。

 EU最大の子牛肉の生産国であり消費国であるフランスでは、8カ月齢以下の牛から生産された牛肉を「子牛肉」と表示するべきと一貫して主張しており、今回の規則の合意については歓迎する、とコメントしている。


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