アルゼンチン、今年2回目の農業ストを実施


牛肉輸出制限の緩和期限を延長

 アルゼンチン経済生産省は11月29日、牛肉輸出制限の緩和の期限である11月30日を前に、再び期限延長を設定した決議第935/2006号を公布した。

 今回の決議では、

 (1) 2006年12月1日から2007年5月31日までの間、生鮮・冷蔵および冷凍牛肉については、2005年1月1日から同年12月31日までの間における月間平均輸出量の50%相当量の輸出を認めること

 (2)(1)に定める割当枠は、輸出業者ごとに同期間の実績割合により配分されること

 (3) 二国間協定およびEU向け高級生鮮牛肉(通称ヒルトン枠)、生鮮・冷蔵および冷凍の骨なし牛肉(メルコスル関税分類番号0201.30.00および0202.30.00)のうち、460キログラム以上の去勢牛由来の後四分体および経産牛由来の加工用肉については本決議の対象外とすること

 が定められている。

 加えて、11月30日に国立農牧取引管理事業団(ONCCA)決議第2029/2006号が公布され、これまで280キログラムであった牛のと畜重量の下限が240キログラムに引き下げられた。

政府の経済政策に抗議

 政府はこれまで、国内の物価上昇を抑制するため、牛肉の輸出制限および輸出税の引き上げ、トウモロコシの輸出登録の一時停止などの経済政策を講じてきた。しかしながら、政府の経済政策により、生産者販売価格が低迷する一方で、最近の農産物の国際価格の上昇により輸出業者に大きな利益がもたらされたとみられることから、生産者は不満を募らせていた。11月下旬に入り、農業者団体が農業ストの実施を示唆したため、政府は農業者団体の要望を踏まえ、上述の決議を公布した。

 しかしながら、これまで政府が農業者団体との話合いを拒否していたことなどから、生産者の不満に拍車がかかり、アルゼンチン農牧協会(SRA)、アルゼンチン農牧連盟(CRA)およびアルゼンチン農業連合会(FAA)の主導により今年2回目の農業ストを12月3日から9日間にわたり実施、この間、家畜と穀物の売買が中止された。

 SRAは「1年以上にわたり迷走した措置により市場は混乱を来し、投資を停滞させている。また、農業セクターに制度上不安定な状態をもたらし、国の発展に貢献するための見通しを妨げている」と政府の経済政策を批判している。

 また、FAAは(1)牛肉の価格形成に当たっての透明性の確保、(2)生産者の収益が輸出業者へ転嫁されることに対する反対、(3)家族農業の地位向上のため、行政による農村振興策の要請、(4)1万戸以上の生産者が抱える負債に対する明確な解決、(5)地域経済の発展のための基金の創設―を主張している。

政府は生産者を強く批判

 アルゼンチンでは農業者団体が主導して農業ストを行うのはまれなことであるが、1年の間に2回も行われたことから、政府の経済政策に対し、生産者は大きな不満を持っていることがうかがえる。

 ミチェリ経済相は農業スト3日目となる12月5日、政府を代表して農業ストに対する強い批判を行った。「生産者は穀物や牛肉などを輸出価格と同水準にして、アルゼンチン国民の食卓やポケットに持ち込もうとしている。パンや小麦粉、牛肉の基本食品の価格を引き上げることが真の狙いで、これこそまさに政治的イデオロギーである」と述べた。また今回の農業ストの実施は1週間前から予告されていたことから、流通業者は事前に対応することができたため、同相は「小売店、スーパーマーケットでの供給に問題はない」とも述べている。


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