charset=x-sjis"> 畜産の情報−トピックス−2007年7月 月報海外編

チリ、農業における男女機会均等を推進


FAOの支援による農業部門のプロジェクト実施

 チリ農業省(MINAGRI)は4月末、セミナーを開催し、2005年から2年間にわたり実施された農業部門における男女機会均等プロジェクトを総括した。これは国連食糧農業機関(FAO)が支援したプロジェクトで、18万1千ドル(2,208万円:1ドル=122円)が投入された。このプロジェクトは(1)農業政策や公共プロジェクトにおける男女格差の是正を図るため、地方職員に対する研修の実施、(2)地域および全国レベルでの計画や決定の裏付けとなる性別による分類を追加したデータベースの構築、(3)男女機会均等のための地域委員会の設置を通じた中央と地方の格差の改善−を目的としている。

 この結果、現在実施中の農林業センサスの調査項目に、性別や農場における女性の労働などが加えられたほか、13の地域委員会が設置され、農村女性の活動に関する提案が行われたことなどが成果として報告されている。


99年より関係機関と連携

 国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(CEPAL)によると、チリは労働者全体の男女比はラテンアメリカ・カリブの他国とほぼ同水準にあるものの、農村における賃金労働者の比率においては、他国に比べ著しく低い。こうした背景から、農業部門における機会均等については、99年にMINAGRI内に農牧庁(SAG)、農業政策・調査局(ODEPA)、農業投資財団(FIA)ほか7つの関係機関の代表などから成る機会均等諮問委員会が設置され、政策やプロジェクトにおいて男女格差の観点も含めることを推進するよう提言している。

 チリ統計院の2002年センサスでは、総人口の13.4%が農村部に居住しており、この農村人口の4割程度が女性であると見なされている。また、労働力の35%が女性であるにもかかわらず、業種別に見ると農業・漁業に従事する者のうち女性はわずか6%であるとしている。

 ロハス農相は「男女機会均等は欠くべからざる事項であり、民主主義への参加に対する社会的および経済的な本質的発展要因であることから、農業省が実施するすべての政策およびプロジェクトにおいて、現政権中に男女機会均等の障害を排除することを目指し、まい進したい」と発言している。


経済分野と比べ農業分野での格差大

 一方、セミナーに先立ち、ODEPAは「1990〜2006年の農業および経済における労働力、雇用および報酬に係る男女均等」と題したレポートを公表した。同レポートは正規労働力としての参入(民間年金基金(AFP)への加入)における男女別、地域別、分野別による正規雇用の機会(AFPへの納付状況)、報酬などを比較したもので、それぞれについて、男性に対する女性の比率(男性の数値を100として比較)を示すことで、「男女格差」を称する指数としている。

 農村における活動については、男性の固定的役割という社会通念から雇用面での男女格差は経済界全体より極めて大きいと報告されており、2005年の農業および経済全体それぞれの雇用納付者数は、女性の比率は農業の32.5%に対し、経済分野では58.4%、納付者報酬額の男女比については農業の79.1%に対し、経済分野では88.1%となっている。調査は2006年6月現在登録されているAFPにおける756万6,696人の加入者および333万6,700人の納付者のデータに基づいており、このうち女性の比率はそれぞれ44.6%と37%を占めている。

 ODEPAでは、調査期間中に男性より多くの女性が労働力として参入したものの、国内人口の50%以上を女性が占める中で、男性に比べ、中退率が低いことなどから就学年数が平均1.3年多いことを考慮しても、雇用市場に完全に参入するために女性が雇用の場を獲得する能力は比較的限定され、このため、女性の労働参入率は男女比にして37%前後とかなり低い。このことは技能を有する人材が完全に活用されていないことを意味し、国の競争力を阻害する結果となると指摘している。


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