シンガポールとインドネシア、AI対策国際協力


インドネシアで続くAI犠牲者の発生

 東南アジアにおける鳥インフルエンザ(AI)は、2003年にその発生が確認されて以来、多くの国では期間を置いた波状的発生が確認されている。2007年になっても各国では散発的な発生が確認され、そのうちインドシナ半島ではラオスとカンボジアで新たに犠牲者が発生したものの、それらの周辺国での死者は確認されていない。しかしながらインドネシアにおいては、依然として感染による犠牲者が発生し続けており、5月12日にも同国における76人目の犠牲者が確認され、一向に終息の気配は見えない。国連食糧農業機関(FAO)や世界保健機関(WHO)などの国際機関は、ウイルスの変異によるヒトからヒトへの大規模感染を警告しており、近隣諸国も強く懸念している。


3年間で450万ドルの国際協力プロジェクト

 このような中、シンガポールとインドネシアの両保健担当相は5月9日、インドネシアのバンテン州タンゲラング行政地域において、今後3年間にわたるAI対策プロジェクトを行う覚書に署名したと発表した。このプロジェクトは、インドネシア内におけるAI対策を拡充することによってヒトへのAIの感染を防ぐことを目的とし、資金は総額450万ドル(5億4千万円:1ドル=120円)で、インドネシアも国庫からその半額の225万ドル(2億7千万円)を支出するとしている。これに関連してシンガポールは研究所の専門家の育成のほかに総額150万ドル(1億8千万円)相当の提供を申し出ており、60万ドル(7,200万円)を機材の購入に充てるよう指定しているが、残りの90万ドル(1億8百万円)分については特に使途は限定しないとしている。また必要な資金の残りの部分については国際援助により賄われるとされている。


AI対策全般にわたる内容

 450万ドルの予算の内訳は、AIへの防疫対策に26%、監視に22%、発生への対応に21%、診断、広報そして予備費にそれぞれ9%を振り分け、残りの4%を運営費としている。この国際協力事業の実施は、2005年11月に韓国の釜山で開催されたアジア太平洋経済協力(APEC)会議の首脳宣言において、各国はAI対策で協力する旨をうたっており、これに従ったものとされている。そのため、今回のプロジェクトにはFAOやWHOなども関与するとともにAPECのメンバー国である米国も参加するとしているが、その役割については検討中であるとされている。

 なお、今回のプロジェクトの覚書について署名が行われたタンゲラング行政地域では、これまでに12人のAI患者が確認され、そのうち10人が死亡している。新プロジェクトはこの地域を対象の一つとして実施されるが、インドネシアの保健担当相は、継続するAI発生の原因の一つとされる庭先養鶏の存在について、伝統的に慣れ親しんできた慣習を規制することは非常に難しいと説明している。


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