特別レポート

ウルグアイの牛肉産業の概要(輸出市場獲得に向けた取り組みを中心に)

ブエノスアイレス駐在員事務所 横打 友恵、松本 隆志

1.はじめに

 ウルグアイは、牛肉生産量および輸出量ともに世界第1位(米国農務省の統計による)のブラジル、生産量第4位のアルゼンチンという2大供給国に挟まれている。自国は生産量では10位にも入らないが、輸出量はアルゼンチン、カナダをしのぎ第5位という位置にいる。これは2005年以降、ブラジル、アルゼンチン両国が口蹄疫の発生により多くの市場を失っている間に同国が目覚しい躍進を遂げたことによるものと言える。

 さらに2006年6月には日本向け加熱処理牛肉加工施設5施設が承認、11月には日本、韓国へ使節団を派遣し、衛生当局と生鮮牛肉の輸出解禁に向けた話し合いが持たれるなど、アジアなどの市場獲得も視野に入れている。

 こうしたことから、今回はウルグアイの牛肉産業について、輸出市場獲得に向けた取り組みを含め報告する。

表1 牛肉生産量(2006年) 表2 牛肉輸出量(2006年)


2.牛肉産業の一般概況

 肉牛飼養地帯と飼養形態

 ウルグアイの肉牛生産は「牛1頭がサッカーフィールド2つ分(1万5千平方メートル)の自然草地を享受」した放牧により行われているが、羊(毛肉兼用)との複合経営が全国の土地の91%、1,430万ヘクタールと大半を占めている。主要な肉牛飼養県は中央部のTacuarembo、Cerro Largo、Paysanduなどである。なお、羊の飼養は比較的北部の地域に集中している。

 飼養されている牛の70%が英国種(ヘレフォードが大半、ほかにアバディーンアンガス)の肉専用種であり、残りは乳用種(ホルスタイン、ノルマン)と交雑種である。ここ10年でセブー種であるブラーマンやネローレも導入され、交配が徐々に進んでいる。

 また、フィードロットはウルグアイではあまり一般的ではなく、「戦略的補助給与」として、干ばつなどの際に一時的に実施する程度である。

図1 ウルグアイの地図


牛飼養農家戸数

(単位:戸)

表3 総飼養頭数


表4 県別飼養頭数(2005年)


表5 牛肉の需給動向

 国立食肉院(INAC)によると、牛と畜頭数は2002年から毎年かなりないしは大幅に増加しており、2005年の牛と蓄頭数は2001に比べ1.7倍となっている。このうち、去勢牛が全体の51.2%を占め、次いで経産牛36.5%、未経産牛9.6%、その他子牛および雄牛が2.6%となっている。

 1頭当たりの平均枝肉重量は260.8キログラム(去勢牛、2005年)でチリ(260.2キログラム、同)とほぼ同程度である。

図2 と畜頭数の推移

 全国に輸出向け承認と畜施設は38施設あり、その内EU向け輸出承認施設は16施設で、上位7〜9社はいずれも1日当たりと畜頭数が800〜1,000頭規模である。

表6 と畜能力ランキング(2006年)

 消費動向

 ウルグアイの1人当たり牛肉消費量は世界的にトップレベルであり、2005年は48.3キログラム、2006年は52.0キログラムと伸びており、主にバーベキュー用の骨付きバラ、うちモモが多く消費されている。


3.貿易関係


 輸出動向

 ウルグアイの全輸出額のうち約20%を牛肉が占めており、畜産は同国の重要な輸出産業となっている。

表7 ウルグアイの品目別輸出金額(2005年)
 

 2005年および2006年は、牛肉輸出量、輸出額ともにこれまでの記録を更新し、米国を中心とするNAFTA、EU、ロシア、ブラジルなどを主要な輸出先として好調な成長を続けているが、2005年と2006年では輸出先に大きな変化が見られた。2005年はウルグアイの主要輸出先として米国が29万4,603トン(うちUR合意に基づく関税割当数量2万トン)で全輸出量の74%を占めていたが、2006年は34%と半減し、一方、ロシア(同2%→24%)、チリ(同1%→10%)が大幅にシェアを拡大した。この増加は、ブラジル、アルゼンチンにおける衛生問題に加え、アルゼンチンが行った牛肉輸出制限がその要因であり、ブラジル、アルゼンチンを主要な輸入相手としていたロシア、チリは新たな供給先をウルグアイに求め、さらに部分的にEUについてもウルグアイがほぼ供給を独占する結果となった。

 また、2006年には新たな輸出先としてメキシコが加わったことも注目される。ウルグアイとメキシコは2003年11月に調印、2004年7月から発効した経済補完協定により、牛肉については協定発効時10%の関税率が毎年1%ずつ引き下げられ、3年目以降7%となることが定められたものの、家畜衛生条件などが整わずにこれまで輸出が先延ばしになってきた。2006年10月に288トンの最初の船積みが行われ、今後は主要な輸出先の一つとなることが期待されている。

表8 牛肉輸出量、金額の推移

 各輸出先への主要部位は、EUはランプやロイン、北米は前四分体やトリミング、ブラジルはうちモモ、ロシアはランプやトリミング、イスラエルはコシェル(ユダヤ教の教義に則り)処理した前四分体などとなっている。

 なお、ウルグアイでは2001年4月を最後に、口蹄疫の発生は見られないが、近隣の南米諸国では口蹄疫が発生していることから、口蹄疫ワクチンを接種し続けることを選択している。

図3 国別輸出割合(2005年)



図4 国別輸出割合(2006年)



表9 国別輸出単価



表10 輸出パッカーランキング

 このようにウルグアイにとって、牛肉は重要な輸出品目であり、輸出市場を拡大しているところである。ブラジル、アルゼンチンといった牛肉供給国が輸出市場に戻ってきている中、引き続きウルグアイ産牛肉の輸出市場を維持、拡大することが大きな課題となっている。この輸出促進において中心的な役割を果たしているのが、1984年政令第15605号により設立されたINACである。INACでは、積極的に海外へ官民合同で構成した食肉関係の使節団を派遣し、世界食品メッセ(ANUGA)や国際食品展(SIAL)などといった国際的な食品イベントへ参加するなどして、ウルグアイ産牛肉のプロモーションを推し進めている。2006年は5月に開催されたSIALに合わせた中国訪問をはじめ、11月には日本、韓国にも使節団を派遣し、衛生当局との話し合いの場を持つなど、アジア市場の獲得にも目を向けている。こうしたことから、今後の輸出戦略について、これまでの米国単独ではなくリスクを分散させるために輸出先の多様化を図ることとし、具体的には輸出先を下記の4地域に区分し、地域別の取り組みを検討していくとしている。

 (1) すでに安定している輸出先:EU、ブラジル、イスラエル、カナリア諸島 

 (2) 競争国によって左右される輸出先:チリ

 (3) まだ安定しておらず、今後強化する輸出先:米国、メキシコ、ロシア

 (4) 解禁の可能性がある輸出先:中国、韓国、日本


4.市場獲得に向けた取り組み

 (1)ウルグアイナチュラルミート認定プログラム

 国際市場における食の安全性、動物福祉、環境保全に関しての要求が高まる中、ウルグアイ産牛肉に対する消費者の信頼を向上させ、差別化を図り、付加価値をつけるため、2001年にINACにより、牛および羊を対象とした「ウルグアイナチュラルミート認定プログラム」(PCNCU)が策定された。

 PCNCUは、トレーサビリティ、各段階における基準、商標の3つの要素により構成されている。プログラムへの参加は自発的で、INACに承認された認証機関により認定を受け、証明書が発行される。証明書の有効期間は1年となっており、期限前に認証機関の監査を受け更新を行う。現在までに290の生産農家と9の加工処理施設が登録されており、45万頭が対象となっている。

 定められている要件は次の通り。

 (1) 家畜の識別、追跡、農牧施設

 ・家畜は、ウルグアイ国内で生産、飼養、と畜および処理・加工されたものであること

 ・本プログラムに該当する家畜ということが群単位で識別できることが最低要件であり、生産者証明や移動記録などの書類を有すること

 ・牛についてはと畜前90日、羊については同60日を認定施設で飼育されていること

 (2) 家畜の取り扱い

 ・本プログラムに登録される家畜は屋外で飼育され、常に水が飲める状態にあり、自由な行動が許されること

 ・雄と雌は予定外の妊娠を避けるため、区別して管理すること

 ・牧場の年間飼養頭数は、1歳未満の牛は1ヘクタール当たり5頭、1〜2歳は同3.3頭、2歳以上雄牛は同2頭、経産牛と未経産牛は同2.5頭、乳牛は同2頭、羊は同13.3頭以下とすること

 (3) 衛生・環境

 ・環境汚染と家畜伝染病まん延防止に努め、農牧水産省(MGAP)に登録された化学製品だけを使用し、その使用に当たっては指示に従うこと  

 ・各施設は罹患や傷害のある家畜を隔離する場所を有すること

 ・隔離期間中も牧草が自由に摂取できること

 (4) 飼料と栄養

 ・家畜は牧草地から直接採取した最低60%の乾草を与えられること

 ・家畜が与えられた飼料履歴とその期間の記録を保管するここと

 ・家畜由来の飼料および成長ホルモンの投与は禁止されている。

 (5) 施設・設備

 ・施設全体が家畜取り扱い上、適切な施設および家畜の搬出入へのアクセスを備えていること

 (6) 医薬品・獣医処置

 ・衛生管理および疾病管理について、担当獣医師により監督され、正しい処置がされていること

 ・特別に適用される家畜用処方箋はMGAPに登録されたものであり、処方内容、対象家畜、投与薬品、投与方法を記録、保持すること

 (7) 牧場の移動やと蓄のための家畜の輸送およびその取り扱いに当たっては、家畜を尊重してストレス軽減を図り、けがを避けること。なお、移動証明書は輸送の間携行すること

 (8) と畜前、と畜、加工処理

 ・MGAPの営業許可を保有するパッカーにおいて、危害分析重要管理点監視方式(HACCP)や適正製造規範(GMP)、衛生基準計画に従い、と畜、加工処理すること

 ・対象家畜のと畜が他のと畜と明確に識別された形で実施されたことを確認すること。この場合、ロットによる識別が最低限要求される。カット処理が進む段階で各部分の情報を表示したラベルを貼付すること

 ・製品にはと畜・加工処理施設名、と畜年月日、ロット番号、消費期限、認定ナチュラルミートロゴ、ナチュラルミートの認定業者のロゴを表示すること

 2004年8月には米国農務省(USDA)がUSDA認証プログラムにより、PCNCUによる「ナチュラルミート」を米国内で販売することを承認している。現在までに米国内でUSDA認証プログラムにより29社が承認されているが、海外ではウルグアイが初となった。

 現在、「ナチュラルミート」は米国およびプエルトリコで販売されている。

 (2)ウルグアイ・ナチュラルクラブ

 INACでは、これまでにも観光スポーツ省など他省庁や団体と合同で観光業と連携した「ウルグアイ・ナチュラル」と題した振興活動を行ってきたが、2006年11月、ウルグアイ産牛肉の主要市場における地位の確立、促進のために新たなプランを立ち上げた。

 このプランについて、INACは「ウルグアイ産牛肉は衛生面で問題がなく、例えばニュージーランド(NZ)産との比較において、同じ放牧肥育であってもNZ産は乳用種(注)、ウルグアイ産は肉用種であることから品質では勝っていると自負しているものの、残念ながらアルゼンチン産ほどの知名度はない。また、INACの予算も限られており、大々的な宣伝活動を行えないため、レストランなどを中心に消費者へ直接アピールできる場を利用していくこと、輸出先としてニッチ市場を模索することを重点に置いた新たな消費促進活動」と説明している。

 (注:NZから米国向けとなるのは、挽き材用の冷凍牛肉が大半のため、ウルグアイやアルゼンチンの関係者がこのように考えるのは無理がないと思われる。)

 同プランは民間からの投資を募り、共同で事業を実施することとしており、現在、想定されているのは以下の3案である。

 (1) Uruguay Natural Clubのスタンプを作成し、ウルグアイ産牛肉を使った料理を少なくとも一品は供する国内の外国料理レストランの店頭に提示する。  

 さらに著名人を同店での夕食に招待し、マスメディア通じて紹介する。

 (2) 給仕、内装すべてをウルグアイ風に仕立て、ウルグアイをテーマにしたレストランを国内で新規に開店する。

 (3) 日本、韓国をはじめとする生鮮肉を輸出できない国において加工肉を使用したサンドイッチ、サラダなどの軽食を供するファストフード店を開設する。

 上記(1)、(2)は未実施であるが、2006年12月に韓国ソウル市内に(3)の様式のレストラン第一号店が開店した。ここでは伝統的な韓国料理にウルグアイ産牛肉が使用される。

消費促進活動の中で使用されているポスター:左は牛肉(ウルグアイの地図に模している)右は由来(「ウルグアイの地図)


 (3)トレーサビリティ

 ウルグアイでは2006年8月2日に、トレーサビリティ法(法律第17997号2006年7月12日制定)が公布され、トレーサビリティが始動した。この法の下で、先に公布された決議(2006年4月21日付け)において定められた個体識別登録システム(SIRA)により、個体番号が記録された耳標とICタグの装着、データベースへの牛の登録が義務付けられ、出生からと畜までの間の移動、所有者の変更、衛生関連などの情報を把握することが可能となる。

 2006年9月1日から、出生したすべての牛は生後6カ月齢または、出生した農場から最初に移動する前にSIRAへ登録することとなる。すでに任意で個体識別を実施している牛については、その追跡が確実な方法で証明されることを条件に現システムへの移行が認められる。

 2010年4月1日以降は国内すべての牛に耳標とICタグを装着し、SIRAへの登録を行うこととなる。同日以降、登録されていない牛は、トレーサビリティの条件を失うことになり、輸出認可のないと畜場で処理された後、その牛肉は国内市場でのみ販売される。

 トレーサビリティ法では、政府は次の事項の費用を負担することが規定されている。

 (1)データベースの構築、運営、管理

 (2)システムの管理、情報収集、技術設備の設置

 (3)耳標とICタグの購入・配布、初期段階におけるSIRAの実施に必要な技術指導と研修

 なお、この費用負担はトレーサビリティ法の発効から2010年3月31日までとされ、農家が必要とするデータベース上の情報収集に係るコンピュータや読み取り機などのインフラ整備については農家負担としている。

 また、SIRAで定められている主な事項は以下の通りとなっている。

 ・SIRAの管理は農牧水産省の畜産衛生部(DGSG)が行う。

 ・一見して個体番号の識別が可能な耳標とボタンタイプのICタグの二つを一組として個体識別を行う。

 ・登録のために必要とされるデータは、個体番号、性別、品種、出生時期、飼養場所、所有者名で、これらデータの登録は書類または電子書式で行うことができる。

 ・牛の移動は、SIRAに登録された認可機関(個人または法人)により飼養場所および所有者名のみを変更することができる。

 ・牛の登録取消は、死亡、自家消費、紛失などの場合とと畜向けに食肉処理施設に搬入された場合の二通りによって行われる。

 ・耳標を紛失した場合には所有者自身が再装着できるが、ICタグが脱落した場合は、DGSGの介入を必要とする。2個の識別器具を両方紛失した場合は、その牛はトレーサビリティの条件を喪失することになるとしている。

 なお、2006年9月の開始から2007年1月現在までの間に113万セットの識別器具が配布されており、これは年間250万セットの配布を見込んでいる中で、すでに約半数が生産者の手に渡ったことになる。

 2010年には世界でも数少ない全頭への耳標装着による全頭管理体制が取られることになる。

(1)生産農家の事例:Las Rosas農場


農場本館

 首都モンテビデオ市から北に145キロメートルのフロリダ県に所在するLas Rosasは近隣に5農場を所有し、これらの総面積は1万3千ヘクタール、1万2千頭の牛のほかに羊4種、馬4種、その他愛玩用として数々の動物を飼養している。1973年から現所有者の女性実業家、プリンセス・ダーレンバーグ氏が肉牛、酪農、羊毛、家畜改良と畜産全般への事業拡大を図り、現在に至っている。

 肉牛部門については、飼養されている牛の大半がヘレフォード種である。繁殖方法は牧牛による自然交配を行っており、3〜5月の間に放牧地に繁殖雌牛に対して3%のオスを投入し、12〜2月に分娩する。繁殖雌牛の平均出産回数は5回、毎年20%が更新される。100頭の繁殖雌牛から生まれた子牛が離乳から3カ月後に焼印を押されるまでの育成率は80%で、この間の子牛の増体量は1日当たり600グラムとのこと。誕生時の子牛は平均約40キログラム、26カ月齢、480キログラムで出荷、歩留まりは53%。


LasRosas農場 ヘレフォード

 年間1,200頭の去勢牛が契約パッカー3社へ出荷される。牧草肥育のみだが、前述のナチュラルミート認定プログラムは現在承認申請中とのことであった。

 2000年には6,600ヘクタールだった農場面積だが、2007年には15,000ヘクタールに拡大する予定にある。今後は肥育に力を入れ、去勢牛をさらに2千頭増やしたいとしている。

 (2)食肉パッカーの事例:Canelones社

 日本向け加熱処理施設として承認された5施設のうちの一つであるCanelones社は首都モンテビデオ市から北に45キロメートルのカネロネス市に所在する。1947年、家族経営によるハム・ソーセージ製造から事業を開始し、80年代に入り、と畜処理およびコンビーフなどの缶詰製造を優先させた。97年に米国企業に買収され、その後経営者が替わり、2006年にブラジルの食肉パッカーBertinに買収され、現在に至る。

 工場面積は22,000平方メートル、従業員数1,000人、1日当たり牛1,000頭のと畜能力を有する。現在、国内で唯一、缶詰、加工肉、生鮮肉全般を製造、1月当たりの製造能力は、生鮮冷蔵肉は950トン、生鮮冷凍肉1,100トン、缶詰肉800トンとなっている。去勢牛の平均と畜重量は470〜480キログラムだが、冬場は缶詰を製造するので経産牛が中心となり、この場合の平均と畜重量は410キログラムとなる。

 生産量のうち輸出向けが大半を占め、国内向けは5〜8%程度(骨付きバラ、テール、内臓)とのこと。輸出先は主に米国、イスラエルおよびEUで、チリ、ロシア、南アフリカがそれに続く。担当者によると、今後はメキシコ、カナダ、米国といったNAFTA向けに力を入れるとしている。

 なお、日本向け加熱処理施設として認可されているものの、現在までに輸出の実績はない。日本向けの輸出品目では牛舌が有力だが、価格面でアルゼンチン産、ブラジル産との競合に勝てず、市場に入り込めないことから、むしろ韓国への輸出に力を入れており、真空パック詰めされた煮沸肉(スジ、ストリップロイン、バラ)を出している。このため、日本向けにも同様に真空パック詰めが売れればと考えている。

 一方、国内向けとして、アサード(骨付きバラ)についてはブランド名をつけずに販売し、ランプテール、ヒレなどは輸出向けに回らなかったものをカネロネスのブランド名を冠して販売している。


パッカー工場内


5.終わりに

 ウルグアイは2003年に国際獣疫事務局(OIE)より口蹄疫ワクチン接種清浄国のステータスを得、さらに2006年5月下旬に開催されたOIEの総会において豪州、NZ、アルゼンチンとともにBSE清浄国としての承認を受けたことで、国際的にも家畜衛生水準が保証され、市場拡大を図る上での条件はすでに満たしている。

 一方、2006年の世界の牛肉供給はメルコスルが全供給量の46%を占めるなど、メルコスルが果たす役割は拡大している。こうした中、ウルグアイの好調さはトレーサビリティの導入など衛生対策や輸出促進活動への真剣な取り組みの成果はもちろんだか、アルゼンチン、ブラジルにおける口蹄疫発生という外的要因に支えられた面が大きい。これをきっかけにウルグアイ産牛肉が国際市場に評価され、今後はどのようにしてシェアを伸ばしていくのかが大きな課題といえる。

 なお、ウルグアイだけでなくメルコスル全体の動きとして注目されるのが、外国企業によるパッカーの買収である。これまでにもウルグアイにおいては、米国やアルゼンチン資本の参加が見られていたが、2006年にはブラジル資本による数社の買収が続いた。ブラジルは社会経済開発銀行(BNDES)の支援の下、南米各国のパッカー買収を盛んに行っており、メルコスル内での食肉企業再編に向けた動きが活発化するのか、今後の動向を注視したい。


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