動物輸送に係る動物福祉基準の厳格化


 EUでは本年1月5日より、動物の輸送に係る順守すべき動物福祉の基準などを定めた規則が新たに施行されることとなった。これまでにもEUの動物輸送は、厳しい動物福祉基準に基づき実施されてきたが、今回の新たな規則の施行により、動物輸送に従事する輸送事業者など関係者はさらに厳格な対応が迫られることとなった。


指令から規則へ

 これまでの動物の輸送に係る順守すべき動物福祉の基準などは「輸送中の動物の保護に関する理事会指令(91/628/EEC)」に基づき、各加盟国が具体的な方法や手段を定めた法令をそれぞれ制定していた。今回、これを全加盟国に直接適用される「輸送中の動物の保護および取り扱いに関する理事会規則(EC/1/2005)」へと変更したことにより、順守すべき基準などについて加盟国間で大きな差異はなくなることとなった。


輸送手段の改善

 車両装備の面では、8時間以上の輸送を行う車両について、強制換気装置、温度管理システム、飲水装置、運転者に温度の異常を知らせる警報装置の導入などが義務付けられる。

 また、今後新たに導入する輸送車両および2009年以降はすべての輸送車両を対象に衛星ナビゲーションシステムの搭載が義務付けられた。このシステムの導入は、規則で定める輸送時間や休憩時間などの管理のため、輸送行程の記録や情報提供を容易にすることを目的としている。なお、輸送者は、本システムを利用した輸送記録を最低3年間保管することが義務付けられ、各加盟国の主管当局の要請により記録の提出を求められることがある。


輸送対象の厳格化

 これまでは、へその緒の傷が完治していない生後間もない動物の輸送を禁止していたが、これに加え、新たに以下の対象を追加した。

 ・生後3週間未満の子豚、同1週間未満の子羊、同10日未満の子牛については100キロメートルを超える輸送を禁止

 ・生後8週間未満の犬や猫については、親子での場合を除き輸送を禁止

 ・分娩予定(妊娠期間の90%超)および分娩後1週間以内の雌の輸送を禁止


輸送のための資格取得の義務化

 動物輸送に関係する運転手や取扱者は、2008年1月5日以降、技術取得の訓練の受講および動物取り扱いの資格を取得することが義務付けられ、資格を有しない者が運転や取り扱いを行うことが禁止される。これは、車両への積み込みや積み下ろしの際、動物に大きなストレスが生じているためとし、この資格の導入により、動物へのストレスの軽減を目指す。


今後の検討方針

 今回の新たな規則では、それまでの指令で規定されていた輸送時間や輸送密度について見直しは行われていない。例えば、牛の輸送時間は最大14時間とされ、1時間の休憩を挟めば、さらに14時間まで輸送が可能となっている。また、輸送時の動物の密度については、550キログラムの牛を輸送する車両の場合は、1頭当たり最低1.3〜1.6平方メートルが必要と規定されている。

 本規則の制定の際、これらの基準の厳格化については、加盟国間で大きな争点となり、見直しを見送った経緯があるが、欧州委員会は、2009年末までに、この輸送時間や輸送時の動物の密度の基準を厳しくする提案を再び行いたいとしている。


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