乾き続ける大地、豪州の干ばつ状況


   

ひとくちMemo

 豪州の年間平均降水量は約460ミリと日本の年間降水量の27%程度と低く、また、日中の寒暖差も大きいことから内陸部を中心に乾燥気候が広がり、干ばつが起きやすい状況にある。

 このため、豪州の農業の歴史は、常に干ばつとの戦いであり、毎年、各地で干ばつに見舞われている。過去にも、大規模な干ばつの発生が豪州の農業に多大な被害をもたらしており、最近では、畜産に大きな被害を与えた2002/03年度の干ばつが記憶に新しい。

 降水量が少ない中で大規模な水脈が少ない豪州では、“降雨”が農業全般を支える命綱となっており、また、同時に地域社会を支えている。

 2006年中旬から続く干ばつは「100年に一度の規模」(連邦政府ハワード首相談)と言われるほど、その規模や影響は計り知れないものとなっている。度重なる干ばつに耐えてきた各地の農業地域では、今回の干ばつで離農、転居する農家が増え、人口の減少から地域社会を維持することも難しくなっているところもある。特にニューサウスウェールズ(NSW)州、ビクトリア(VIC)州など東部地域での被害は大きい。

 南米沖の太平洋で発生したエルニーニョが今回の干ばつの要因とみられているが、世界各地で広がる気象変動により、雨頼みの豪州の農業は、今後、先行きの不安定さが増している。







干ばつの影響が続く放牧地(NSW州)



NSW州からVIC州をカバーするマレー・ダーリング水域では、かんがい設備を張り巡らせることで地域の畜産、酪農業の発展を支えてきた。しかし、今回の干ばつで、ダムの貯水率が大幅に減少したことから、かんがい地域での取水価格の大幅な引き上げや取水制限が実施され、畜産業などへの影響は深刻となっている。

写真:内陸部に広がるかんがい用水と放牧地での水散布(NSW州)



干ばつによる取水制限などで放牧が難しくなった農家では、粗飼料や飼料穀物を購入するなど生産コストが増大しており、経営への影響が懸念されている。苦肉の策として、道路際の草地も貴重な放牧地として活用されている。(NSW州)



今回の干ばつの引き金とされる南米のエルニーニョも2007年3月にはその終息が発表され、また、今年に入り、各地域でまとまった降雨が記録されるなど、徐々に回復が期待されている。しかし、水の供給量として十分ではなく、NSW州では州の93%(2007年3月)がいまだ干ばつの状況下にあるなど、依然としてその被害は深刻となっている。2007年4〜6月の気象予報では、例年を上回る水準の降水量と予測されており、農家は一日も早い回復を期待している。

(表はNSW州の干ばつの被害状況:茶色の部分が干ばつ被害地、左は干ばつの被害が少なかった2005年12月時、右は2007年3月現在)


(シドニー駐在員事務所 横田 徹、井田 俊二)

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