2020年までに再生可能エネルギーのシェアを20%とする目標を決定(EU)


各加盟国の再生可能エネルギーシェアの目標数値設定は今後の課題

 加盟国首脳が参加する欧州理事会は3月9日、地球温暖化防止およびEUのエネルギー確保や競争の促進を目的としたエネルギー分野全体での新たな政策パッケージについて合意した。

 今回の合意で、EUは2020年の温室効果ガスの排出量について90年比で最低20%削減することとし、さらに、米国、中国、インドなどとの協調を前提に、今後この目標を30%まで引き上げる用意があるとしている。このように、今回の合意が、2012年を目標年度とする1997年の気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書後の地球温暖化対策協議において主導的役割を担うことが期待されている。

 なお、この温室効果ガス削減のための具体的な対策として、農業分野が関係する再生可能エネルギーについても、2020年までにEU全体で消費するエネルギーの20%までこのシェアを引き上げることを義務とする。また併せて、同年までに、全加盟国で輸送に利用される燃料の最低10%をバイオ燃料由来のものとすることを義務とする。


EUにおける再生可能エネルギー利用の現状

 2005年のEU25カ国のエネルギー消費に占める再生可能エネルギーのシェアは、前年より0.3ポイント増の6.38%と増加を続けているものの、これまでの目標値であった「2010年までに12%」には遠く及ばない。また、加盟国別に見れば、ラトビア、スウェーデン、フィンランド、オーストリアのようにすでに20%を超えている国もあれば、イギリスやベルギーなど2%にも満たない国もあるなど現状には大きな差が見られる。このため、今後の加盟国ごとの目標値設定に当たっては、それぞれの再生可能エネルギーの利用状況、化石燃料や原子力などそのほかのエネルギーへの依存状況などを勘案の上、公正で適切な数値を割り振ることとしている。


 主要国における再生可能エネルギー利用の現状(2005年)

 
資料:EurObserv'ER「European Barometer of Renewable Energies 2006」


農業分野での反応

 欧州委員会のフィッシャー・ボエル委員(農業・農村開発担当)は、本年1月の欧州委員会による提案が公表された段階で、この再生可能エネルギーの目標値設定が、欧州委員会が現在進める農村開発政策に関連し農村地域で新たな雇用創出が見込まれることや、バイオエネルギー対策として促進するエネルギー穀物の生産拡大策に沿ったものとして「大変良いニュースである」と歓迎のコメントを発表している。

 また、EUレベルの農業団体である欧州農業組織委員会/欧州農業共同組合委員会(COPA/COGECA)も9日、農村地域で新たな雇用創出が見込まれることなどから地球温暖化対策に関する今回の決定を歓迎する旨の声明を発表している。

 このように、農業分野では自然環境のみならず、経済面でもメリットが見込まれるとしておおむね好意的に受け止められており、将来的な飼料生産との競合など農業活動に対する影響を懸念する声は、これまでのところ大きなものとはなっていない。



EU における再生可能エネルギーの供給源シェア(2005 年)



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