農相理事会、各種農業関連施策を議論(EU)


 EUの農相理事会は3月19日、各種農業関連施策に関する議論を行った。このうち、畜産分野に関連する主な議論の概要は次の通り。


品目別に分かれた共通市場制度の簡素化

 共通農業政策(CAP)のうち、生乳・乳製品、牛肉・子牛肉、豚肉などの各品目分野における市場の統一を図るための共通市場制度(Common Market Organisations:CMO)について、これらを統合した単一の制度とする欧州委員会の提案について議論を行った。

 昨年12月の提案では、21品目に係る市場介入制度、民間在庫補助、輸出補助金などのCMOが、現在、41規則(600超の条項)により規定されているが、これを一つの規則(200弱の条項)に統合する。欧州委員会では、このCMOの簡素化により、制度の透明性の向上、制度理解の促進および事務負担の軽減が図られ、このことが農産物コストの低減につながる結果、納税者であるEU市民全般にとって利益があると強調している。なお、今回の統合は、制度に係る技術的な見直しであり、制度内容の変更を伴うものではない。欧州委員会は、欧州議会および欧州理事会における検討を経て2008年からの施行を目指しており、これによりCAPの大部分は、本規則、直接支払い制度に関する規則、農村開発に関する規則、CAPの財政に関する規則の4つの規則により規定されることとなる。

 今回の議論では、今後も引き続き専門家による検討が必要とされたが、簡素化の方向性についてはおおむね支持された。


豚肉の市場買入れ制度の存続

 なお、この共通市場制度の簡素化の議論と併せ、豚肉の市場買入れ制度の存続の可否についても議論が行われた。本制度は、域内市場価格(全加盟国の市場価格を飼養頭数により加重平均した価格)が基本価格(1トン当たり1,509.39ユーロ(23万8千円:1ユーロ=158円))の103%を下回り、この状態が継続しそうな場合、買入れ機関が買い入れを実施するものである。欧州委員会は、本制度が1971年以降、30年以上実施されていないことから廃止を提案していたものである。

 これについては、フランスをはじめとする多くの加盟国が、利用実績がなくても制度の必要性は変わらないとしてこれに強硬に反対した。本件については、引き続き専門家による検討を行い、本年6月までに結論の合意を目指すとしている。


ロシアとの衛生問題に関する協議

 3月12、13日にモスクワで開催された専門家レベルによるロシアとの衛生問題に関する協議に関し、欧州委員会より報告が行われた。協議の多くは、2005年11月以降続くロシアによるポーランド産食肉の輸入停止問題に関してであった。EU側によるこれまでのポーランドの施設の検査結果では、EUの衛生基準を満たしており問題点は確認されないとして、ロシア側の輸入停止理由が不明りょうな状況となっていた。今回の協議で、本年2月のロシア側によるポーランドの食肉処理施設の検査に関し、ロシア側より初めて書面により質問事項が提出された。EU側は、早急に回答を行うとしており、ポーランド産食肉の早期の輸出解禁を目指すとしている。

 また、ロシア側は、EUから輸入する食肉について残留物質の数値がロシアの基準値を超える事例があるとして、全加盟国の残留物質のモニタリングの2006年の実施状況や2007年の実施計画に関する報告を早急に提出するよう求めた。報道では、ロシア側は3月中の報告を求めて、これが行われない場合には、本年4月以降、EU産の食肉の輸入を全面的に停止するとしていたが、EU側の期限内の対応により、とりあえず4月以降の食肉輸入の停止は回避されている。


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