畜産団体、今後の飼料穀物の安定確保を懸念(豪州)


NSW州のバイオエタノール混合燃料の導入方針に反対の意向

 飼料穀物を利用する畜産団体で構成されている家畜飼料穀物利用者グループ(LFGUG)は3月5日、ニューサウスウェールズ(NSW)州首相が、今後、バイオエタノール混合燃料の利用義務化を公約として掲げていることに反対する意向を表明した。

 NSW州首相は、今年3月に行われる州議会選挙を控え、2007年9月からバイオエタノールを2%混合した燃料の販売を実施し、2011年までにその混合比率を10%まで引き上げるとする公約を掲げている。この方針に対し、LFGUGは、環境問題対策としての実効性に疑問を呈するとともに、食品価格に及ぼす影響が全く配慮されていないと指摘している。

 豪州の畜産業界では、NSW州やビクトリア州といった南東部を中心として干ばつの影響による飼料不足や穀物価格の高騰による生産コストの増加が経営上問題となっているが、これに加えて、政府が推進するバイオエタノール生産により、将来的な飼料穀物の安定確保に対する懸念が広まっている。

 このグループは、穀物肥育肉牛、豚肉、鶏肉、酪農および鶏卵の生産に関連した業界であり、豪州フィードロット協会(ALFA)をはじめ5つの団体で構成されている。


2011/12年度には、国内飼料穀物のの35%相当がバイオエタノール生産へ

 豪州農業資源経済局(ABARE)によると、現在、豪州では3つのエタノール工場が稼動しており、さらに数カ所の工場が計画または建設中である。これらの工場がすべて稼動した場合、豪州で生産された穀物(主に小麦やソルガム)のうち、バイオエタノール生産への仕向け量は2011/12年度には250万トンに達し、これは、飼料穀物消費量の約35%に相当するとしている。

 なお、2004/05年度豪州産小麦の仕向け先を見ると、総生産量(2,110万トン)の約28%(約613万トン)が国内で消費され、このうち約45%が飼料穀物向けである。また、経営部門別の仕向け先は、酪農(29%)、肉牛(26%)、肉鶏(22%)、養豚(17%)、採卵鶏(6%)の順となっている。

 豪州連邦政府は、バイオエタノール生産を推進しており、それに関連し、2016年(2012年以降補助金を漸減)まで補助金の給付を決定している。


飼料穀物価格高騰による生産コスト増で鶏卵小売価格は4割程度引き上げ

 豪州の鶏卵生産者で運営している豪州鶏卵会社(AECL)は3月1日、干ばつに伴う飼料穀物価格高騰による生産コスト増により、今後、鶏卵の小売価格を1ダース当たり20〜30豪セント(約18〜27円:1豪ドル=91円)引き上げざるを得ないと公表した。

 鶏卵生産では、生産コストのうち飼料費が最も大きな割合を占めるが、豪州南東部を中心とする干ばつの影響により飼料穀物価格が高騰し、その結果、この12カ月間で鶏卵の生産コストが約77%増加した。これは、鶏卵1ダース当たり40豪セント(約36円)の生産コスト増に相当する。現在の鶏卵の小売価格は、すでに生産コスト上昇分の2分の1に相当する20豪セント(約18円)が上乗せされ、1ダース当たり2.98豪ドル(約271円)程度となっているが、今後、安定的な鶏卵生産を続けるためには、小売価格の再値上げが必要であるというものである。

 AECLでは、干ばつの状況にもよるが、こういった鶏卵価格や供給の状況はしばらく継続するとみている。また、国内の穀物飼料価格については、今後の干ばつの動向に関係なく、短・中期的にみて低下する可能性は小さく、その間、鶏卵の生産コストについても高水準のまま推移するとみている。
 ABAREによると、2006/07年度の冬穀物生産量は前年度比61%減、夏穀物は同59%減を見込んでいる。


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