ルソン地域のFMD清浄化が課題 ● フィリピン


3地域のうち2地域ではFMD清浄化を達成

 フィリピンの国土は多数の島から構成され、大きく区分すると、ルソン、ヴィサヤおよびミンダナオの3地域に分けられている。現在のところ、国際獣疫事務局(OIE)は、ルソン地域を除く2地域とパラワン島およびマスバテ島を口蹄疫(FMD)の清浄地域としている。ミンダナオ地域の清浄化は2001年に、ヴィサヤ地域は2002年に清浄化が確認された。これら2地域の清浄化ステータスは今日まで保たれており、先般、農務長官はミンダナオ島からシンガポールへの豚肉輸出の可能性に言及した。


ルソン地域の清浄化が課題

 FMDの清浄地であることは、防疫に要する施設や薬剤、要員や防疫組織の運営に要する費用が節減できるほか、日本など有望市場への輸出が可能となるなどの大きな経済上のメリットがあるため、フィリピン政府は国家FMDタスクフォース(NFMDTF)を1970年代に設立して清浄化に努めてきたところである。ミンダナオおよびヴィサヤ地域が清浄化した後、残されたルソン地域に対して活動を集中してきた。NFMDTFの活動内容は、地方政府の活動とタイアップして、家畜移動の監視、衛生証明書の承認、食肉および食肉製品の検査書の証明、その他家畜の移動に必要とされる書類の承認などである。現在、ルソン地域では、一部の地区において1年以上の長期にわたってFMDの発生がなく、政府が独自に清浄化を宣言した地区があるとともに、新たに清浄化宣言を準備している地区があり、これらの地区への他地区からの家畜などの流入に対する監視を強化している。


困難な違法豚肉の取締り

 ルソン地域の中心となるルソン島にはマニラ首都圏があり、人口が集中して消費活動が活発に行われるため、この地域への海外からの豚肉や水牛肉の密輸や非公設と畜場で処理された豚肉の流入があり、完全な取締りは困難となっている。違法食肉の流入は、衛生上の問題のほかに過剰供給を引き起こすため、家畜の生産者のみならず、流通関係者にとっても大きな問題となっている。昨年11月には養豚業者が政府に対して、違法食肉の取締りを強化するために港湾での保冷車の悉皆(しっかい)検査を行うよう要求している。


豚肉輸出へのハードル

 このように畜産関係者は同国におけるFMD清浄化を熱心に進め、将来的には豚肉製品の輸出を行うことを計画しているが、同国は豚肉製品に関しては純輸入国である。さらに、アセアン諸国の中でも相対的に人口増加率が高いため、将来的に輸出余力がそれほど見込めないのではないかと考えられている。また、飼料原料のトウモロコシなどに関しては一部が食料向けと競合するほか、流通や保管における損耗もあり、十分な供給体制が整ってはいないなど、コスト面で海外の製品との競争上の不利が避けられないと見られている。


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