2006年中国乳業情勢、生乳生産量は3千万トン台に


生乳総生産量は15%増、初の3千万トン台へ

 中国農業部は先ごろ、2006年における中国の酪農・乳業情勢について発表した。それによると、中国の酪農は引き続き安定した成長を維持し、乳製品貿易も拡大したほか、都市部における乳・乳製品の年間1人当たり消費量も、わずかではあるが2年ぶりに増加した。

 農業部の発表では、2006年の乳牛頭数は1,330万頭と予測され、前年比3%以下の増加にとどまった。一方、綿羊やヤギなどを含めた生乳総生産量は、同14.8%増の3,290万トンとなり、初めて3千万トン台に達した。このうち、牛由来の生乳生産量は94.6%を占めるとされ(=約3,112万トンと推察)、前年比13.5%の増加としている。

 また、東北から華北にかけての主要生産地帯でも、優良乳牛の導入に対する政策的支援などを背景に、持続的な生乳生産量の伸びが記録された。生乳生産量(牛のみ)は、国内最大の生産地である内蒙古自治区が前年比27%増の880万トン、第2位の黒龍江省が同16%増の510万トン、第3位の河北省が同20%増の408万トンであり、上位3省・自治区で国内生産量の6割弱を占めるに至っている。


図 中国の都市部における乳・乳製品の年間1人当たり消費量の推移


都市部の乳・乳製品消費量は年間1人当たり26キログラム

 全国の都市部における2006年の年間1人当たりの乳・乳製品消費量は、前年比2.8%増の25.59キログラムとなり、2年ぶりに増加に転じた。

 ただし、都市部における消費の伸びは、その主要である牛乳類(牛乳や加工乳、乳飲料など日本の統計上「飲用牛乳等」と分類され、中国では鮮乳・純牛乳などと呼ばれているもの)が、飼料・包装材価格の高騰などを背景とした小売価格の上昇(2006年=前年比2.7%高の500グラム当たり2.28元(約34円:1元=15.1円))や需要の伸び率の落ち着きなどを背景に鈍化していることから、ここ数年は全体に頭打ちの傾向にある。

 一方、まだ消費の絶対量は少ないものの、近年は酸乳、酸牛乳などと呼ばれるヨーグルトの伸びが目立っており、2006年の都市部における年間1人当たり消費量は、前年比14.9%増の3.79キログラムとなり、引き続き堅調な伸びを示している。

表1 全国の都市部住民1人当たりの乳・乳製品消費量(2006年)


中国の乳・乳製品貿易は引き続き好調

 2006年の中国の乳・乳製品貿易は、輸出入量・額とも前年を上回り、好調に推移した。輸入量は前年比8.7%増の34万8千トン、輸入額は同21.7%増の5億5千8百万ドル(約664億円:1ドル=119円)となったほか、輸出量は同7.2%増の7万5千トン、輸出額は同15.2%増の9千4百万ドル(約112億円)を記録した。

 主要な輸入相手国は、ニュージーランド、米国、フランスおよび豪州などで、乳・乳製品輸入額に占める割合は、それぞれ48.5%、15.1%、10.7%および9.2%であり、上記4か国だけで、中国の乳・乳製品輸入額の8割強を占めている。品目別には、粉乳類やホエイなどの輸入額が多いが、伸び率では、チーズの輸入が金額ベースで前年比4割以上の増加を示している。

 チーズについては、現在はその消費が極めて初期の段階にあるといわれるが、国内大手の光明乳業股分有限公司をはじめ、近年は海外乳業メーカーとの連携などを含め、中国の乳業各社がチーズ市場に積極的に参入し始めているとされる。

表2 中国の乳・乳製品貿易状況(2006年)


 一方、輸出については、香港特別行政区、台湾、ミャンマー、イラクおよびフィリピンなど主にアジア・中東地区が多く、乳・乳製品輸出額に占める割合は、それぞれ41.7%、34.2%、8.9%、2.7%および2.4%で、この5か国・地域で、全体の約9割を占めている。品目別には、れん乳類や液状乳の輸出額が多く、これまでの傾向から、いずれも香港向けが相当なウェイトを占めているものと推察される。

 農業部によれば、外資系乳業は、海外の関連乳業などから輸入した高級育児用調製粉乳を小分け包装し、そのまま高級ブランドとして販売することができるため、主として国際相場の高騰を背景とした2006年の外資ブランドの育児用調製粉乳の国内価格の上昇によって高い利潤を得たとしている。このため、国内の乳業企業が高級育児用調製粉乳の製造に乗り出したものの、主要原料の一つである乳糖をすべて輸入に頼っていることから、その生産は、今後の国際相場の状況によって左右されるものとみている。

表4:中国の関税分類別乳・乳製品輸出状況(2006年)


 こうしたことから、農業部では、2007年の乳製品輸入は引き続き増加するとともに、国内の高級乳製品、特に高級粉乳価格は一層上昇するものと予測しており、国内の乳業企業に対し、加工技術水準を高めて価格決定の主導権を握り、国際市場からの影響を緩和すべきであるとしている。


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