厳しい寒さにより飼料が不足傾向(アルゼンチン)


牧草に加えて補助飼料も不足

 7月9日にブエノスアイレス市内では89年ぶりの降雪がみられるなど、アルゼンチンの今冬は厳しい寒さとなっている。このため、霜により牧草が枯れ、飼料が不足している状況が聞かれるようになっている。

(1)肥育牛の出荷状況
  牧草の生育の回復が見込めず、放牧を続けて良い増体を望めないと判断しているため、仕上げ不足(アルゼンチン国内では生体重250〜300キログラム程度の若齢肥育牛の柔らかい牛肉が好まれている)でも、出荷されている牛が多くみられること

(2)飼料の状況
 (1) 穀物価格の上昇から、農地が次第に放牧地から穀物生産に代っており、残された草地は生産性が高くない場所であり、また放牧密度も高まっていること
 (2) 今夏はパラナ川の洪水もみられたが、特に今春は干ばつ気味であったため、サイレージなどの補助飼料が不足していること
 (3) トウモロコシの価格上昇により、トウモロコシ収穫を手伝い、飼料をより安く買う、コーンスターチ工場から副産物のグルテンフィードを買う、代替にソルガムを利用するなどの取り組みが一部には見られること
 (4) トウモロコシに加え、フスマや大豆油かすの価格上昇が懸念されること(アルゼンチン政府は、今冬の厳しい寒さの中、一時期、産業向けエネルギー供給を制限した。これにより食品工場の稼働時間が制限され、副産物の供給量が減少しているとみられている。)

(3)気象の見込み
  南極からの寒波の来襲が依然として続き、多くの地域では春までまとまった降雨量が見込めないこと


放牧から穀物栽培への動きを加速

 穀物価格の上昇による肥育牛生産の収益の相対的な低下と気象の影響による飼料不足は、パンパ地域の放牧地から穀物生産への転換の動きと同時に、放牧から穀物肥育への動きも促進させているとみられる。このような中、政府が行う牛肉の輸出制限は牛肉生産の将来展望を不透明にするものとして、今後、一層政府に対する生産者の圧力は高まっていくものとみられる。


◎ 途上国の家計収入と支出に占める食費の割合

 最近の農産物の国際価格の上昇要因として、開発途上国の購買能力の増大がその一要因して挙げられている。このため、わが国とアルゼンチン、ブラジルの最近の家計収入と支出に占める食費の割合を比較してみた。

表1 家計収入

 わが国の家計収入が横ばい傾向であることに対し、途上国のアルゼンチン、ブラジルの収入が伸びていることがうかがえる。自国通貨ベースでは、ブラジルの家計収入の伸びは、アルゼンチンに比べ劣っているが、レアル高が進んでいることから、円ベースに換算すると、ほぼ同じような伸びを示している。

表2 支出に占める食費の割合

 支出に占める食費の割合を見ると、いずれの国もほぼ横ばい傾向で推移している。ブエノスアイレス市内においても、最近の食料品を含めた生活必需品の価格上昇は大きな話題であるが、途上国では家計収入の伸びにより、農産物価格が上昇している中でも、食費の割合を大きく変化させないで済んでいることがうかがえる。このことから、途上国の家計収入の伸びも農産物価格の上昇を可能にしている要因の一つであると考えられる。


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