農場畜産の推進のための提言(ベトナム)


大規模農場畜産への投資の成功例を紹介

 ベトナム農業農村開発省(MARD)は、「農業部門のアクションプラン2007」を取りまとめた。この中で、農場での畜産の現状を分析するとともに、その推進が農業部門の効率化につながるとし、そのための提言を行っている。

 MARDおよび統計総局の取りまとめによれば、2006年10月1日現在、全国で約1万6千か所の畜産農場があり、うち養豚場が42.5%、酪農場が35.9%、養鶏農場が15.4%、水牛、ヤギなどのその他の家畜の畜産農場が6.2%を占めている。自給飼料を利用できる牛、水牛、ヤギ、羊は内陸および山岳地帯での飼養に適しているが、この地域での農場畜産の集約はそれほど進んでいない。

 畜産の集約化には労働力、施設、家畜への多大な投資とともに、畜産の知識が必要であるが、そうした投資の結果、高い生産性が得られた成功例を紹介している。

 1 98億ドン(約8千万円:1ドン=約0.0082円)の投資で10万羽の採卵鶏を飼養し、年間7億1千2百万ドン(約6百万円)の収入を挙げている採卵鶏農場
 2 65億ドン(約5千3百万円)の投資で600頭の繁殖雌豚を飼養し、年間1万2千頭の肉豚、350トンの豚肉を出荷し、年間約10億ドン(約8百万円)の収入を挙げている養豚場
 3 54世帯のうち、30世帯で大規模養鶏を、16世帯で養豚を、他の世帯で園芸や水産養殖を行い、雇用を生み出している畜産協同組合


更なる農場での畜産の推進のための提言

 報告では、聞き取り調査により、畜産による収益をおおよそ次のとおり取りまとめている。

  1 養豚:肥育豚1頭1日当たり1千ドン(約8円)、1頭4か月(肥育期間)当たり10〜12万ドン(約800〜1,000円)。繁殖豚1頭1年当たり200〜250万ドン(約1万6千〜2万円)。
 2 養鶏:肉用鶏は1キログラム当たり1,000〜1,200ドン(約8〜10円)。採卵鶏は卵1個当たり150〜200ドン(約1.2〜1.6円)。
 3 肉用牛:肥育牛1頭1年当たり100万ドン(約8千円)。繁殖雌牛1頭1年当たり150〜200万ドン(約1万2千〜1万6千円)。

 また、農場での畜産の集約化により、生産性の向上、品質と疾病のコントロールのみならず、森林地域や未開墾地域の土地利用が促進されるとともに、雇用機会も向上されるため、ベトナム農業部門の効率化のためには、農場での畜産のより一層の推進が必要としている。

 そのため、現在の農場畜産の最大の障害と考えられている分散した畜産用地の確保を図るための融資制度の拡充を提言している。また、持続可能な畜産の実現を図るため、飼養管理技術の改善に加えて、環境問題や疾病のコントロールを求めている。

 さらに、と畜場や食肉処理場、市場を備えた、地域自治体による大規模産地の改善計画の必要性を挙げている。こうした大規模産地は、集約的飼養管理と環境、衛生面の観点から、住宅地から離れた場所に考慮されるべきだとしている。

 加えて、飼養管理技術、牧場経営技術の訓練プログラムの実施を提言している。


家畜育種計画の成果を紹介

 これとは別に、MARDにおいて、「農業・林業品種と動物育種選抜研究計画 2001-2005」の成果が集約された。

 家畜部門では、外来種との交雑によりと体重量が68キログラムから72キログラムまで増加した豚の事例や、牛肉1キログラム当たり飼料消費量が17%減少した肉牛の事例、1乳期当たり5,000〜8,000キログラムの泌乳能力を持つホルスタインのF2交雑種の事例などが紹介されている。


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