タイの水牛酪農、バンコク近郊で始動



ひとくちMemo

 東南アジア各国では、農耕用として水牛が飼養されてきたが、農作業の機械化などにより、一部の国を除き飼養頭数は減少傾向で推移している。タイにおいては、各国に比べこの傾向が顕著である。
 タイ政府は、水牛を含めた肉用牛の飼養頭数の増加に向けた対策を実施しているが、農業・協同組合省はバンコク東部に位置するチャチューンサオ県において、水牛の酪農利用に向けた取り組みを開始している。今回、訪問したムラー・ファームは、もともとホルスタインによる酪農を経営していたが、現在ではタイ国内でもほかに例の少ない水牛乳の本格的な生産に取り組んでいる。2006年のタイ国内における水牛飼養農場数(飼養規模20頭以上)は5,141カ所、このうち約90%が飼養頭数50頭未満で、飼養頭数が100頭規模以上の農場は1.6%(82カ所)である。
 水牛乳の生産は、まだ試行段階ではあるものの、タイ国内の注目度も高い。今後は、水牛乳の市場を確立させるとともに、水牛酪農についてほかの農家の模範となることを目的としている。

 

 


 水牛は全体で200頭を飼養しており、うち水牛の搾乳頭数は30頭。水牛はインドから乳用に改良されたムラー種を導入している。



 牛舎は3棟を所有しており、うち2棟で水牛を飼養している。写真は育成牛舎と周辺の畑。農場全体の面積は400ライ(約64ヘクタール:6.25ライ=1ヘクタール)、うち飼料用草地と畑作用地が300ライ(約48ヘクタール)。

 飼料はホルスタインと同じものを給与しており、特に水牛用としての配合などは意識していないとのこと。

 


 育成牛舎は半屋外式となっている。水牛は体温調節機能が十分に発達していないため直射日光に弱く、水浴びや泥浴びなどによる体温調節が必要とされる。そのため育成牛舎には泥浴び用の池が設置されている。また、飼養管理などの技術的な面に関しては、県畜産局の指導を受けているほか、タイのチュラロンコン大学の協力も得ている。


 ムラー種は皮膚、被毛ともに黒色が基本とされるが、褐色や淡黄色の個体もみられるとのこと。

 

 

 



 搾乳は午前6時と午後3時に行う。搾乳は5頭ごと実施している。搾乳作業には作業員が3名配置される、このほかに牛の誘導係が1名。

  1頭当たりの平均乳量は約2千キログラム。個体ごとに搾乳量を確認、今後の改良に向けたデータを収集している。

 搾乳された乳は、その場で煮沸消毒を行う。

 主力製品のモッツァレラチーズ
 バンコク市内のイタリア料理店、ホテルへ直接販売している。販売価格は1キログラム当たり800バーツ(約2,800円:1バーツ=3.5円)。

 水牛乳、1本150ccで15バーツ(約53円)。ちなみに、バンコク市内で販売されている牛乳は、250ccで10バーツ(約35円)程度。

 
(シンガポール駐在員事務所 林 義隆、佐々木勝憲)

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