charset=x-sjis"> 畜産の情報−トピックス−2007年10月 月報海外編

大型バイオ燃料工場が稼働開始(アルゼンチン)


国内最大規模のバイオディーゼル工場が稼働開始

 ブエノスアイレス市から北西に約250キロメートル離れたロサリオ市およびその周辺の町は、アルゼンチンの穀倉地帯であるパンパの中央に位置するとともに、面するパラナ川を利用して、大豆をはじめとする穀物の輸出港として栄えている。また、穀物の集積地であることから、多くの搾油工場も配置されている。

 ビセンチン社は、ロサリオ市から北に約20キロメートル離れたサンロレンソ市に位置し、1979年から大規模な搾油工場の稼働を始めた老舗の企業である。同社はこの8月に搾油工場に併設して、バイオディーゼル工場の稼働を開始した。同社のバイオディーゼル工場は、現在稼働している工場としては、アルゼンチン国内において最大規模である。


天然ガスから精製したメタノールを利用

 ビセンチン社では、バイオディーゼルは以下の工程で製造される。

  大豆油+メタノール→バイオディーゼル
              +グリセリン

 大豆油は同社で製造した油を利用する一方、メタノールは天然ガスから精製したメタノールを燃料会社から購入している。

 同工場のバイオディーゼルの生産能力は年間約20万トン(1日当たり640トン)であり、この生産のため、年間大豆約100万トン(大豆油約20万トンを搾油)、メタノール約2万トンが必要となる。

 アルゼンチンでは、多くのバイオディーゼル工場の建設計画があるが、いずれもバイオディーゼルの製造方法は、ビセンチン社とほぼ同様であると思われるとのことである。


バイオディーゼルの将来展望は価格次第

 現在トウモロコシの供給国として、アルゼンチンは注目されているところである。しかし、大豆はトウモロコシと作付けが競合する作物であるため、大豆を利用したバイオディーゼルの将来展望などについて、当機構ブエノスアイレス駐在員事務所がビセンチン社のブシャッチ氏に伺った。

(質問)製造したバイオディーゼルは、どこに供給しているのか。

(ブ氏)バイオディーゼルの工場売渡価格は1リットル当たり約0.8米ドル(94円:1米ドル=117円)であることに対し、アルゼンチン国内の軽油価格は1リットル当たり約0.6米ドル(約70円)であることから、現在はすべて米国輸出向けとしている。このため、当社の輸送トラックは自社製バイオディーゼルを利用していない。(注:現在の米国ワシントン近辺のディーゼルの小売価格は約0.8米ドル)

(質問)バイオディーゼルの将来展望を、どうみているか。

(ブ氏)当社は植物油の搾油に長く携わり、植物油を知っている企業であるからこそ、大型ディーゼル工場を立ち上げることができた。今後の植物油とバイオディーゼルの価格動向次第では、バイオディーゼル工場を閉鎖することもあり得る。大きなリスクがあるので、一定規模以上の企業でないと参入は難しいのではないか。

 アルゼンチンでは、バイオエネルギー利用促進に関する法律(法律第26,093号、2006年5月12日付け)に基づき、2010年1月から国内で販売されるディーゼル油ならびにガソリンの中に、5%以上のバイオ燃料が含まれていることが義務付けられることとなっているため、国内需要の増加も見込んでいるとは思われるが、「価格動向次第では、バイオディーゼル工場を閉鎖する」と考えている潔さには驚かされた。しかしながら、同社の敷地を見ると、バイオディーゼル工場一つ分の空地があり、状況次第では同能力の工場をすぐに立ち上げることができるしたたかさも持ち合わせていた。


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