アセアン食品早期警戒システムの導入を計画(タイ)


食品早期警戒システムの導入を計画

 現在、タイからの農産物の輸出額は年間約100億ドル(1兆2,300億円:1ドル=123円)を超えるとされ、世界でも有数の食料輸出国となっている。従来は未加工の原材料の輸出が主流であったが、同国は食品産業を主要産業とするため加工食品工業などの育成に力を注いでおり、同国を「世界の台所」とすべく投資政策を進めている。

 同国にとって、EUは日本と並ぶ主要な市場であるが、農業・協同組合省(MOAC)は、EUにおけるタイ産農産物などの市場拡大に向け、アセアン食品早期警戒システム(ASEAN RASF)の導入を計画している。本計画は、既にEUで79年に導入されている食品と飼料に関する早期警戒システム(RASFF)を応用したものであり、食品の安全を確保するため、農産物や食品の検査状況や残留物質などの情報についてオンラインで情報を共有するものである。同省は、植物検査所、家畜検疫所、水産生物検疫所および食品医薬品検査所の4組織間でネットワークを構築し、当面の間は水産物を取り扱うが、システムが効果的に機能すれば、他の品目へも拡大していくとしている。

 本システムは、将来的にはEU側のシステムと連携することも可能であり、EUの輸入基準を満たさない食品が発見された場合は、即座に関係者に対し警告することが可能としている。同国では、EUの輸入規定などへの対応を続けるとともに、本システムの導入により今後ともEUにおけるタイ産農産物の市場確保を目指すとしている。また、タイ以外のアセアン各国でも、マレーシア、ベトナムおよびカンボジアが本システムへの参画を希望しているとしている。タイとしても、同国が中心となって本計画の促進を図ることにより、アセアン地域が主要な食料輸出地域となるメリットを強調している。


タイ産農産物の安全確保はEUでも課題

 EUでは、2006年におけるタイからの食料品輸入額は約22億ユーロ(3,630億円:1ユーロ=165円)に上り、同国を主要な食料輸入先としている。ただし、同国からの輸入農産物からEUの基準を超える残留薬物などが発見された事例も報告されており、2005年には117件に上っている。EU側にとっても、タイ産農産物の安全性の確保は重要な課題となっており、6月12日にはタイの首都バンコクにおいて、EU主催によりEU RASFFの研修会を開催した。また、同研修会には、シンガポールとマレーシアを除くアセアン各国とインドおよびバングラディシュが出席しているが、EUは各参加国に対して、タイにおける食品の安全確保に対する取り組みを評価するとともに、このような取り組みが世界の食品市場において輸出国の地位を守るものと説明している。


モデル品目でトレーサビリティの導入

 また、MOACは、ASEAN RASFの導入のほか、農畜水産物のトレーサビリティシステムを導入する計画も表明している。モデル品目として、畜産物、水産物、農作物から、それぞれ鶏肉、エビ(ブラックタイガー)、トウモロコシの3品目が選定されており、輸出先の信頼を確保して、農産物の輸出量および輸出額の引き上げを図ることを目的としている。予算額は約2千万バーツ(7千4百万円:1バーツ=3.7円)としており、トレーサビリティに係るデータベースの開発やデータの分析作業などは終了していることから、今後は、モデル3品目における成果をほかの品目に反映させていくとしている。


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