欧州委、穀物の輸入関税を一時的にゼロとする提案(EU)


 欧州委員会は2007年11月26日、世界およびEUでの厳しい穀物需給および価格高騰に対処するため、2008年6月30日までの間、エン麦を除くすべての穀物に課す輸入関税を一時的にゼロとする提案を行った。

 フィッシャー・ボエル委員(農業・農村開発担当)は「すでにEUの穀物関税は相対的に低水準となっているものの、EUにおける穀物需給改善のカギとなるいくつかの穀物には、依然関税が課されている。」とした上で、今回の措置により「EUの穀物輸入が増加し、穀物需給が改善されることを期待する。」とコメントしている。


厳しい穀物需給

 2007年4月の異常な熱波、その後、夏にはヨーロッパ西部を中心とした多雨およびヨーロッパ南東部を中心とした干ばつなどの影響により、EUにおける2007年の穀物生産は2,560万トンと、平年を下回る生産量であった前年をさらに1千万トン下回ると予想されている。また、2006年の生産が伸び悩んだ結果、2007年穀物年度(7月〜6月)の域内の穀物期首在庫は、前年同期を1,320万トン下回る水準となっている。これら生産量の減少および在庫の急激な減少により、EUはこれまでの穀物の「輸出地域」から、7月以降で520万トンもの穀物を輸入する「輸入地域」となっている。

 世界の厳しい穀物需給によりEU域内で流通する穀物価格も上昇しており、例えばフランスにおける9月末の飼料用大麦の流通価格は、2006年夏の2倍となるトン当たり270ユーロ(43,700円:1ユーロ=162円)にまで上昇している。この上昇は、家畜飼料原料の、大麦から比較的安価なトウモロコシへの転換を引き起こしており、トウモロコシ価格も2007年7月のトン当たり183ユーロ(29,600円)から9月中旬の同255ユーロ(41,300円)へ上昇するなど、枝肉価格の低迷に苦しむ養豚経営を中心に、域内の畜産経営に悪影響を与えている。


穀物の輸入関税の一時的な引き下げを提案

 EUの輸入穀物にかかる関税の実効税率は、介入買入価格に1.55を乗じた額とロッテルダム港到着時の平均CIF価格の差を基に算出している。昨今の国際的な穀物価格の上昇を受け、デュラム小麦、普通小麦(上質)、ライ麦、ソルガムについてはすでにゼロとなっており、トウモロコシについても、2007年度のピーク時の1トン当たり16.21ユーロ(2,630円)からゼロに引き下げられている。

 普通小麦(中質、低質)には約300万トンの低関税枠が設定されており、枠内税率はトン当たり12ユーロ(1,940円)、枠外税率が同95ユーロ(15,400円)となっている。また、大麦にも約30万トンの低関税枠が設定されており、枠内税率はトン当たり16ユーロ(2,590円)、枠外税率が同93ユーロ(15,100円)となっている。

 本件については、2007年12月20日の農相理事会において、ゼロ関税の例外品目をライ麦、ソバ、キビに修正の上、合意され、2008年1月11日より適用となった。

 今回の穀物関税の引き下げ措置により、エン麦の関税(トン当たり89ユーロ(14,400円))などを除きすべての関税がゼロに引き下げられる。ただし、今後の市場動向によっては、2008年6月末前にも、再び税率を引き上げるとしている。


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