バイオ燃料利用義務化へ(フィリピン)


バイオ燃料の生産を推進

 フィリピンでは、サトウキビ、キャッサバ、トウモロコシやココナッツなどバイオ燃料の原料となる作物が豊富に生産されており、2006年における生産量はサトウキビが約2千4百万トン、キャッサバが約180万トン、トウモロコシが約610万トン、ココナッツが約1千5百万トンとなっている。同国政府は、これらの作物が生産過剰や国際相場の変動などにより受ける影響を緩和する目的もあり、バイオ燃料の生産を推進してきている。また、同国では原油や石炭の輸入数量の削減を図ることによりエネルギーの外部依存率を下げ、エネルギーの自給率を2005年の約57%から2010年には約60%以上にすることを目標としている。このため、太陽エネルギーや地熱、バイオマスなどの活用による再生可能エネルギーの増産に取り組んでいる。


バイオ燃料法(共和国法第9367号)の発効による利用義務化

 同国では、2004年より政府関係の車両などにバイオディーゼルの混合軽油の使用が義務付けられるなど、バイオ燃料の利用が促進されており、バイオ燃料法(共和国法第9367号)が2007年1月に公布され、2月に発効している。同法は、(1)農作物の有効活用を図り原油輸入量の削減を図ること、(2)温室効果ガスおよび有毒なガソリン添加物の使用を中止して有毒ガスの排出を削減すること、(3)地域雇用を促進し所得の向上を図ること―などを主目的としている。フィリピンでは、同法が発効したことにより、バイオエタノールやバイオディーゼルなどのバイオマスに注目が集まっており、同国農務省(DA)と科学技術省は共同でバイオ燃料生産に係る実用可能な原料と技術の特定や開発を進めることとなっているほか、DAはバイオ燃料製造に必要な穀物生産プログラムの開発を進めることとなっている。

 同法では、法律の発効後3カ月以内に国内で販売されるディーゼルエンジン燃料に対し1%以上のバイオディーゼルの混合を義務付けており、2007年5月6日より実施されている。また、国家バイオ燃料委員会(National Biofuel Board:NBB)により、2年以内にバイオディーゼルの混合割合が2%に引き上げられるか否かが検討されるとしている。バイオエタノールについては、法律の発効より2年以内にガソリンに対し最低5%以上の混合が義務付けられ、同じく4年以内にはNBBによりその混合割合を10%以上とするか否かが検討されるとしている。また、同国ではバイオ燃料の使用を促進するため、従来から物品税や付加価値税などの優遇策をとっているが、今回もバイオ燃料などの製造などを行う企業などに対し下水道料金の免除や政府系金融機関による優先貸付などが実施される。


バイオエタノール生産にトウモロコシの利用も模索

 同国のバイオエタノール生産はサトウキビが主体であるが、国内の大学による調査によれば、フィリピンにおけるバイオエタノール製造コストは1リットル当たり35ペソ(約95円:1ペソ=2.7円)で、ブラジル産の同24.4ペソ(約66円)、豪州産の同26.6ペソ(約72円)と比較して約3割程度高いとしている。そのため、国内のバイオ燃料企業は、より生産性が高いトウモロコシの利用も検討しているとされる。

 同国では、2007年のトウモロコシ生産量は前年より増加すると予想されている。乾期が長引いた影響はあるものの、ハイブリット品種の使用拡大や同国南部地域における耕作地の新規開拓のほか、トウモロコシ価格の上昇に伴う農家の生産意欲の強化により他作目からトウモロコシへの転作が進むためとみられている。ただし、同国では養豚業や養殖業などの生産量が増加しており、トウモロコシの飼料用需要も伸びている。飼料業界は、2007年の飼料用トウモロコシが約180万トン不足すると予測しており、トウモロコシ生産量は前年より増加するものの、飼料用トウモロコシの輸入は引き続き実施されている。このことから、トウモロコシを原料にしたバイオエタノールの生産実現に向けては曲折も予想される。


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