インドの生乳生産量は2006/07年度に1億トンに達する見込み


インドは世界最大の生乳生産国

 インドの生乳生産は、国内の農業生産額の約18%(2004/05年度)を占め、農業部門において重要な位置を占めている。その主産地は、インドの西部と北部である。

 インドは、水牛乳と牛乳を合わせた生乳生産量が、インドの統計によれば2005/06年度には約9千7百万トン、2006/07年度には約1億トンに達すると予想されており、FAOSTATによれば第二位の米国を約1千3百万トン上回る、世界最大の生乳生産国である。

インドの生乳生産量の推移

 さらに、国内の経済発展に伴い、今後乳製品の需要が拡大すると見込んでおり、これを踏まえて、生産を拡大する計画を策定している。

 生乳生産の畜種別内訳を見ると、2005/06年度では生乳生産量の約54%、約5千2百万トンは水牛由来であり、その量は増加傾向で推移しているが、その割合は、牛由来の生乳生産量が約4千万トンと、水牛由来を上回る割合で増加したことから、微減であった。

インドの蓄種別生乳生産量内訳


副業的な酪農がほとんど

 インドの酪農は小作農が中心である。生乳生産は、全国に約13万ある村の約7千万戸で行われている。土地を持たない農業労働者や小作農が、生産性の低い1〜2頭の乳用家畜を飼養して生乳生産を行うというのが主な生産形態である。

 こうした乳用家畜の主な飼料は穀物の残さや副産物であり、女性を中心とした家族労働によって飼養されている。

 いくつかの地域で酪農業の商業化が進展しているものの、依然として、自家消費分以外の余剰の生乳を販売する、畑作農業の補完的な位置付けが大部分である。

 1頭1乳期当たり約1千キログラムという低い生産性ながら、低コストで生乳生産がなされており、結果として環境負荷が低く持続的な生乳生産を行っている。飼料の大部分が穀物の残さや副産物であり、穀物は大部分が人間の食用に消費されている。

 牛はインドでは神聖な動物とされており、雄牛も大部分は農耕用として飼養されている。しかしながら、余った雄牛もおり、そうした雄牛が市街地の道路をさまよって交通問題を引き起こす例も多々見られる。

 生乳生産量の増加が人口の増加を上回っていることから、一人当たりの生乳利用可能量は増加傾向で推移しており、2006/07年度には10年前の約1.21倍の1日当たり約245グラムに達すると予想されている。

インドの1人当たり生乳利用可能量の推移


消費地向けの生乳流通の7割を非組織的部門が担う

 インドの生乳生産量の約46%が飲用に、約47%がギー(半液状バター)、凝乳といった伝統的な乳製品加工用に、約7%が粉乳やプロセスチーズといった乳製品加工用に仕向けられると推計されている。

 また、生乳消費の約48%が生産地で飲用として消費され、約52%が都市部の消費者向け加工用として販売されると推計されている。

 インドの酪農部門は、酪農協や企業といった組織化が進められているものの、非組織的部門の割合が大きく、都市部向けに販売される生乳の約7割が非組織部門に出荷されると試算されている。

 組織的部門に出荷された生乳は、殺菌、包装工程を経て、製品として国内市場に出荷される。

 非組織部門が大きな割合を占める理由として、消費者が殺菌、包装、流通といった組織的部門特有のコスト負担を嫌うことが挙げられる。また、工場で製造された乳製品よりも、長い付き合いで信頼できる販売人から、直接生乳や伝統的な乳製品を買った方が品質面で安心できると考えている消費者も多い。

 組織化部門では、酪農協の占める割合が大きいと推計されているが、一方では、多国籍企業に代表される私企業による乳製品加工施設への投資も行われている。こうした私企業では、コスト削減を目的として、集約的大規模酪農場の形成を促進している。

 また、国内の経済発展や生活様式の変化により、組織的部門で生産されるブランド製品への需要も高まっている。食品流通、小売業への新規事業者の参入も、ブランド製品の需要増加に貢献している。こうした需要の増加に対応するために、伝統的な水牛や交雑種による粗放的な飼養管理形態から、より生産性の高い飼養管理形態への移行が始まっている。

インドの生乳流通構造


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