米国農務省、2007年の農業経営所得を史上最高と予測


農畜産物価格の上昇により直接支払いの額も減少

 米国農務省(USDA)は2007年11月28日、2007年の農業経営収益予測を公表した。

 これによると、2007年の農業経営所得(農業純生産から雇用労賃や支払地代などを差し引いたもの。政府の補助金を含む。)は、これまで最高だった2004年の859億ドル(9兆8,785億円:1ドル=115円)を上回り、史上最高の875億ドル(10兆625億円:前年比48.3%増)に達すると予測している。その要因として、USDAは燃料向け穀物の需要拡大やドル安による輸出拡大により、一年を通じて主要農畜産物の価格が高水準で推移していることを挙げている。

 一方、連邦政府による農家直接補助金の支払額は121億ドル(1兆3,915億円:前年比23.4%減)と大きく減少すると見通している。これは、耕種作物の価格低下時に支払われる価格変動対応支払(12億ドル(1,380億円):同70.6%減)や価格支持融資関連支払(10億ドル(1,150億円):同43.8%減)の額が大きく減少することに加え、農業災害対策補助金の支払いの多くが2008年度に行われると予想されるためとしている。


農業生産額は、全体でも畜産部門でも史上最高に

 2007年の農業生産額について、USDAは過去最高の3,296億ドル(37兆9,040億円:前年比19.6%増)とするとともに、畜産部門についても過去最高水準を150億ドル上回る1,400億ドル(16兆1,000億円:同16.6%増)になると予測している。

 このうち、酪農の生産額については352億ドル(4兆480億円:前年比50.4%増)とこれまでの水準を大幅に上回るとしており、乳価が前年比で約50%(約6ドル/100ポンド=15.2円/kg)上昇すると見込まれることをその理由としている。また、豪州の干ばつと欧州の生産鈍化による供給不足に加え、ドル安とアジアの実質所得増により、米国産乳製品の輸出が増加していることを、乳価上昇の理由として挙げている。

 また、肉用牛の生産額を503億ドル(5兆7,845億円:前年比2.4%増)、養豚の生産額を145億ドル(1兆6,675億円:同2.8%増)、ブロイラーの生産額を231億ドル(2兆6,565億円:同22.2%増)と予測し、このうちブロイラーについては、在庫の減少とロシア向け輸出の増大により22%以上の価格上昇が見込まれることをその理由としている。


飼料価格の高騰などにより中間投入経費も大きく増加

 一方、農業生産に要する中間投入経費(生産費に相当)についても、2007年は2,542億ドル(29兆2,330億円:前年比9.3%増)と過去最高になると見込んでいる。

 このうち、最も大きく増加するとしているのが飼料費(374億ドル(4兆3,010億円):同22.5%増)であり、トウモロコシ価格の上昇(同21%高)と家畜頭数の増加により、増加額はこれまでの最高だった1973年の48億ドル(5,520億円)を超える69億ドル(7,935億円)になると予測している。

 また、耕種部門の主要経費である肥料費(159億ドル(1兆8,285億円):同19.5%増)や種苗費(126億ドル(1兆4,490億円):同14%増)についても大きく増加するとしており、肥料については天然ガス価格の上昇に伴う価格の上昇(同18%高)や使用量の増加(トウモロコシ用肥料は同9.5%増)が、種苗については作付面積拡大に伴う価格の上昇(同14%高)をその理由として挙げている。


2008年度の農産物貿易は輸出、輸入とも過去最高の予測値を上方修正

 さらに、USDAは2007年11月30日、四半期ごとに公表する農産物貿易見通しにおいて、2008財政年度(2007年10月〜2008年9月)の農産物輸出額を前回の見通しから大きく上方修正し、2007年度実績を91億ドル(1兆465億円)上回る910億ドル(10兆4,650億円)に達するとの見通しを明らかにした。その理由として、USDAは穀物や油糧種子の需給ひっ迫による価格高騰が続いていることに加え、ドル安による輸出競争力の増大を挙げている。

 また、農産物輸入額についても前回見通しを上方修正し、2007年度実績を55億ドル(6,325億円)上回る755億ドル(8兆6,825億円)とするとともに、その要因として、バイオディーゼル向け需要の拡大を背景とする植物油価格の上昇と、カナダドル高やカナダ国内のと畜場の閉鎖を背景とする肥育素牛・肥育素豚の輸入増加を挙げている。

 なお、米国の豚肉生産者団体は、2007年11月29日にEUが豚肉に対する輸出補助金の導入を決めたことについて直ちに遺憾の意を表明するとともに、カナダからの輸入素豚の増大についてもカナダ政府の支援策との関連を注視していく考えを示している。


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