国際価格の上昇、堅調な域内需要を背景に夏場に入り好調なバター生産、輸出


◇絵でみる需給動向◇


バター生産量は7月以降、前年を上回って推移

 ドイツ市場価格情報センター(ZMP)によると、2007年のEU(25カ国)のバター生産量は、上半期は4月を除き前年同月を下回って推移していたが、7月以降は前年同月を6%以上上回って推移しており、この結果1〜8月累計は、前年と同水準の127万7千トンとなっている。(月別のバター生産量の推移はP11のグラフ参照)

主要国におけるバター生産量(1〜8月)の動向


バターの域内価格は3月以降介入価格を上回って推移

 EUのバター需要は2007年初めまでは堅調に推移し、域内価格は、2004年以降毎年引き下げられてきた介入価格をわずかに下回る水準で推移してきた。

 しかし、2006年末以降、国際的な需要のひっ迫による国際価格の上昇に伴い、EUに対するバターの供給期待が高まる中、域内需要は堅調なことから、3月以降、域内価格は介入価格を上回って推移し、10月の域内価格は介入価格を77%も上回る100キログラム当たり435.5ユーロ(70,500円:1ユーロ=162円)となっている。

 ただし、6〜8月に見られた急激な高騰も、9月をピークに落ち着き始め、10月は前月をわずかに下回っている。

バターの域内価格の推移


国際価格上昇に伴い輸出単価は上昇

 国際的に堅調なバター需要を背景に、3月以降、EUのバター輸出量は前年を上回って推移したが、8月は前年を大きく下回っている。これは、バター生産量の少ないこの時期に、域外の引き合いが強いものの、需要が堅調な域内への手当てを優先させたためと考えられる。

 また、国際価格の上昇に伴い、輸出単価も上昇を続け、8月の輸出単価は前年同月を66%上回る1キログラム当たり3.15ユーロ(510円)となっている。なお、この間、国際価格の上昇に伴いEU産バターの輸出競争力が相対的に上昇したことから、バターの輸出補助金は、直前の100キログラム当たり50ユーロ(8,100円)から、6月16日以降、ゼロとなっている。


2008年度より生乳クオータを拡大した場合のバター生産などに与える影響

 欧州委員会は11月20日、共通農業政策(CAP)の中間検証作業として行う「ヘルスチェック」の原案を公表した。生乳クオータ制度については2015年で廃止し、そのための「ソフトランディング(軟着陸)」の方法として、生乳クオータを2015年まで毎年徐々に増加させることを提案している。

 ただし、EU域内外の厳しい生乳・乳製品の需給状況に鑑み、EUではこの「ヘルスチェック」による2009年からの制度変更に先立ち、2008年4月から生乳クオータを2%程度の拡大すると見られている。欧州委員会の試算によれば、仮に生乳クオータが2%拡大し、生乳生産量が2%増加した場合には、バターの生産量は1.1%増加、輸出量は23.4%拡大するとしており、国際的なバターの需給緩和につながることも期待される。

EU27の域外へのバター輸出動向(2007年)


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