欧州委、CAPのヘルスチェックの原案を公表


 欧州委員会は11月20日、共通農業政策(CAP)の中間検証作業として行う「ヘルスチェック」の原案を公表した。「ヘルスチェック」は現行のCAPの政策手段を評価、検証し、2009年以降の政策実施に向けて必要な調整を行うものであり、以前からその内容が注目されていた。


ヘルスチェックにおける主な見直しの項目

 「ヘルスチェック」における主な見直しの項目の概要は以下の通り

(1)直接支払制度の効率化および簡素化について
・生産者に対する直接支払いについて、原則、生産と切り離された生産者を単位とした直接支払い(デカップリング)に移行
・一部の加盟国が採用している、各国が定める面積当たりの単価に乗じて直接支払いの額を算定する単一農地面積支払制度(Single Area Payment Shame:SAPS)の採用期限を、現在の2010年(ブルガリア、ルーマニアは2011年)から2013年まで延長
・直接支払いの需給要件であるクロス・コンプライアンスの簡素化の検証(ただし、新たに気候変動への対応や水質改善管理の義務化を追加)

(2)市場対策について、国際化の進展やEUが加盟国27カ国へと拡大していることを考慮した見直し
・現行の市場政策の妥当性を検証
・穀物(普通小麦を除く)の介入制度の廃止
・穀物の休耕(セットアサイド)制度を、供給管理の手段としてではなく、環境保護の観点から実施
・2015年に生乳クオータ制度を廃止およびそれに向けての対策の検証

(3)気候変動、バイオ燃料需要拡大、水質管理、今後考えられるリスクファクターなどから生物多様性を保護する新たな政策の検証


生乳クオータ制度の廃止に向けて「ソフトランディング(軟着陸)」方法を検証

 生乳クオータ制度については、当初の予想通り2015年3月31日をもって廃止するとしている。同委員会では、制度の廃止に向けた「ソフトランディング(軟着陸)」の方法として、現在の規則では、2008年以降の加盟国ごとの生乳クオータは2015年まで同水準となっているが、これを毎年徐々に増加させることを提案している。今回の案には、具体的な数量は明記されていないが、現在、制度廃止をスムーズに進めるため、制度廃止に伴う加盟国や各地域への影響、それと同時に生じる介入制度や課徴金の調整などの不可避な対策について分析しており、本年末までに公表される報告の中で結果が提示される見込みとなっている。これによる今後の生乳生産や価格の動向が注目される。

 また、本制度廃止の影響により山岳地帯などの酪農家では最小限の生乳生産の確保も困難となることが予想される。このため、上記対策とは別のソフトランディングの方法として、現在、羊、ヤギ肉、牛肉、子牛肉生産者に対する直接支払いについては、特殊な地域では、さらに国または地域レベルで追加支払いができることとなっているが、これに酪農分野も対象とすることなどが検討されることとなっている。


今後の予定

 本案をたたき台としたCAPの見直しについては、今後、農相理事会などにおける6カ月間の協議を経て、2008年末までに農相理事会において採択、最終決定される予定となっている。また、同委員会では2007年から2008年にかけて本見直しに伴う農業予算の見直しを行い、2008/09年のEU予算見直しにつなげていくとしている。

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