袋サイロによる穀物保管が普及(アルゼンチン)


作付面積は大きく増加

 アルゼンチン農牧漁業食糧庁(SAGPyA)は10月17日、主要穀物の生産予測を公表した。アルゼンチンの穀物収穫量は年々増加しており、来年度も作付面積は増加し、トウモロコシについてみると12%増の400万ヘクタールと見込まれている。


収穫された穀物の保管に用いられる袋サイロ

 収穫された穀物の保管には、これまでのカントリーエレベーターに代わり、袋サイロ(ポリエチレン製の袋で直径3メートル、長さ60メートルの袋サイロの場合、約200トンのトウモロコシを保管)が用いられるようになっている。

 袋サイロによる保管のメリットは、
(1)ほ場などで保管できるため、生産者は最も良いタイミングで生産物を販売できること
(2)カントリーエレベーターまで運搬する手間が省けるため、収穫作業が早く終わり、また運搬費も節約できること
(3)最大17%までの水分含有率の穀物を保管できること(カントリーエレベーターで保管するには水分含有率14%以下)
などが挙げられる。

 デメリットとしては、
(1)広大な保管場所が必要となること
(2)袋の端の始末を適切に行わなかった場合、雨水などが浸入し、品質を劣化させること
などが挙げられる。しかしながら、アルゼンチンではメリットがデメリットを大きく上回ることから、普及が進んでおり、2007年度収穫用にアルゼンチンでは約4,000万トン分の袋サイロが販売されている。

 袋サイロで保管された穀物を輸送する場合は、袋詰器と逆の作業を行う搬出器(エストラクトーラ)を用いて、袋の中からトラックに移して輸送する。

 袋サイロは1990年前半にカナダからサイレージ調製用として導入された。普及が進んだきっかけは、
(1)1994年の洪水の際に、カントリーエレベーターに運搬できない地域が発生したこと
(2)2001年の経済危機の際に、金融機関に対し不安を抱いた生産者は、カントリーエレべーターの収容量以上に収穫物を保管する必要性を感じたこと
などであり、これらの経験により、袋サイロを利用した穀物の保管方法が普及したことが大きな要因である。

(左図)
(1)袋サイロ
(2)から(3)へ穀物は移動
(4)袋詰器(ボルサドーラ)
(5)トラクターがブレーキの役目を果たしながら、穀物を袋サイロに一杯に詰める


袋サイロは1年間以上の保管が可能

 直径3メートル、長さ60メートルの袋サイロ(トウモロコシで約200トン保管)の場合、穀物の袋詰め作業が順調に行われた場合、1時間以内で袋が一杯になる。ただし、袋サイロを利用すると約5千トンを保管するためには、1ヘクタールの土地が必要となる。

 水分含有率14%以下の穀物を袋サイロで保管すれば、1年間以上の保管が可能である。

図1 袋サイロ内の気体濃度

 図1のように、袋サイロに入れてから52日で袋サイロ内の酸素のほとんどが二酸化炭素に置き換わり、また図2のように、外気温(紺色)に対し、袋上部の穀物(水色)は、外気温に沿った動きをしているが、袋中央部(黄色)、袋下部(赤色)は、なだらかな温度変化となっている。このような特性のため、ほ場での長期の保管が可能となっている。

図2 気温と袋サイロ内の穀物の温度変化

 袋サイロで保管する場合には、穴が開いていないことを定期的に確認する必要がある。わが国のように野鳥が穴を開けることはないが、ネズミが袋の端を噛んで水が袋の中に入ってしまう被害があるため、袋サイロの周りにすみかとなる草などを生やさない、殺鼠剤をまく、袋の端は登り坂にするなどの対策が必要である。

 袋サイロ(直径3メートル、長さ60メートル)1袋の販売価格は330米ドルである。使用済みの袋サイロは、袋サイロ販売業者と契約している回収業者によって、家庭用のゴミ袋などにリサイクルされている。回収業者は、これまでは無料で回収していたが、原料価格の高騰から次回購入の割引券と交換などしている。

 一方でこのような、回収システムの確立していない地域では、簡易施設の屋根などに再利用されている。


袋サイロによる穀物保管は今後も拡大

 イペサ社はアルゼンチン国内で袋サイロを製造しており、国内のほか豪州、カナダ、南アフリカ、ウクライナ、カザフスタンなどにも輸出している。

 同社は袋サイロの今後の見通しについて、「袋サイロによる穀物保管は今後も拡大するであろう。水分調整をカントリーエレベーターで行い、その周りに袋サイロが置かれるような例がますます増えてくるのではないか」と話している。


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