2007/08年度の冬穀物生産、干ばつでさらに減産見込み(豪州)


1,800万トンと30%減の下方修正、干ばつの被害がさらに広がる

 豪州農業資源経済局(ABARE)は12月4日、2007/08年度(7〜6月)の主要穀物の生産見通しを公表し、小麦、大麦、カノーラの主要3品目の生産量は1,917万トンと、9月公表時の2,559万トンから25%下方修正した。

 今年度の穀物生産は、冬穀物のは種期に当たる4月下旬から5月中旬にかけて主要生産地帯でまとまった降雨が記録されたことで、関係者の間には一時期、豊作との期待も持たれていた。しかし、その後の6〜10月にかけて主要生産地である南オーストラリア(SA)州、ビクトリア(VIC)州北部およびニューサウスウェールズ(NSW)州南部で、降雨量が平年を大幅に下回ったことで育成条件は大幅に悪化し、2年連続して減産との見方が強まっていた。

 なお、冬穀物全体の生産見通しは2,166万トンで、前年度に比べて37.9%の増加としているが、前年度は、100年に一度といわれる大規模な干ばつの影響で小麦、大麦など冬穀物全体の生産は前年度比62%減の1,571万トンと大きく減少しており、94/95年度の干ばつ時に次ぐ低い水準となっていた。


過去5年の平均比で4割を超える減少、NSW州は最悪の前年を下回る

 冬穀物の生産見通しを9月公表時と比較すると、小麦が1,548万トンから1,270万トン(前年度比29%増)、大麦が590万トンから555万トン(同49%増)、カノーラは112万トンから93万トン(同81%増)へと下方修正した。いずれも、昨年度の生産量は上回るものの、過去5年の平均生産実績と比べると、最大で4割以上下回る見通し。

 また、州別の生産見通しについて9月公表時との比較では、最大の生産量を誇るNSW州が514万トンから278万トン(前年度比9%減)、西オーストラリア(WA)州が808万トンから895万トン(同19%増)、SA州が359万トンから455万トン(同79%増)、VIC州が457万トンから370万トン(同172%増)、クイーンズランド(QLD)州が104万トンから116万トン(同38%増)としている。

2007/08年度の主要冬穀物の生産見通し(単位:万トン)


飼料価格の上昇は、食品価格に波及

 例年であれば10〜11月の時期、NSW州からVIC州の穀倉地帯では、12〜1月にかけての収穫に向けて実をぎっしりと詰まらせた小麦や大麦が風にたなびいていたが、今年は、すでに刈り取りを終えた農地ばかりが目についた。これは、干ばつで穀物の成長が遅く、一部では立ち枯れなどが出始めたことから農家が少しでも収益を確保するため、生産をあきらめ牧草向けに刈り取りを行ったことによる。

 このような中、豪州国内で飼料用穀物を多量に使用する肉牛、鶏卵などの生産者団体は連邦政府に対し、上昇を続ける飼料穀物価格に対して何らかの措置を採るよう要求している。具体的には、連邦政府による飼料穀物供給の適正流通、また、輸入による安定供給などを柱としている。

 昨年度の干ばつ以降、国内の飼料穀物価格は上昇を続けており、今年度も不作との見通しが出される中で、価格は高水準での推移を続けている。このため、飼料穀物を利用する畜産物の生産コストは軒並み増加しており、食料品価格への波及も顕著になっている。

 なお、11月下旬から12月にかけて、肉牛生産地や酪農地帯を中心に降雨が続いたことで放牧環境は改善に向っていることから、今後、飼料穀物利用の減少が予想されることで、価格は徐々に下降すると期待されている。


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