LIPC WEEKLY


95年の十大ニュース−大洋州−


【シドニー駐在員事務所】 鈴木 稔、石橋 隆



1.乳製品の輸出交付金にかえ酪農家に直接交付金

一昨年のUR交渉で乳製品の交付金制度が輸出補助金とみなされたことから、豪州

連邦政府は7月からこれに代わる新制度をスタートさせた。この新制度は、従来の乳

業メーカーに対する輸出価格支持を廃止する一方、飲用向け生乳及び国内乳製品向け

加工原料乳に課徴金を賦課し、これらを原資として、輸出交付金廃止によって乳代が

減額される加工原料乳生産者に対し、直接交付金を交付するもので、特に酪農家の所

得補償に配慮したものとなった。



2.対日牛肉輸出低迷でパッカー操業中止

 日本の輸入牛肉市場が低迷する中、9月下旬から豪州クイーンズランド州のパッカ

ーの一部に輸出向けと畜場の操業を一時中止するものが出た。米国からの対日牛肉輸

出急増に加え、円安・豪ドル高が豪州パッカーの採算性を悪化させたことが主な要因

であったが、労使問題も絡んで工場閉鎖となったパッカーもあった。操業の中止期間

は、1週間のところもあったが、多くは1カ月余りに達し、この結果、10月以降、

豪州産牛肉の価格が回復したものの、今後の日本市場での米国とのシェア争いに不安

材料をもたらした。 



3.生乳生産量、過去最高を記録

 豪州の94/95年度の生乳生産量は、前年度を1.6%上回る82億6百万リット

ルと過去最高を記録した。ただし、年度前半は順調なペースだったが、後半以降干ば

つ被害が酪農地帯まで及んだことや穀物価格が約2倍にはね上ったことから急ブレー

キがかかり、当初見込みを1.2%下回った。一方、全般的に酪農を取り巻く環境は

好転し、今後も東南アジア諸国を中心に需要増大に伴う乳価上昇が見込まれるため、

酪農家の生産拡大意欲は強い。



4.拡大続きの飼養頭数に急ブレーキ

 近年、急拡大を続けてきた豪州のフィードロットも、9月末時点での飼養頭数は約

36万8千頭と6月末より12.5%減少し、12月末はさらに12%減の約32万

5千頭と見通されている。その要因は、干ばつによる穀物の供給不足と高価格、米国

の対日牛肉輸出増に伴う競争激化、豪ドル高などである。穀物生産その他、状況は幾

分改善される兆しもあるものの、特に、日本市場への依存度の高い豪州フィードロッ

ト産業は大きな試練の時期を迎えたと言える。



5.フィードロットの認定制度がスタート

 各フィードロットが自ら施設、飼養基準、職員の管理から動物愛護、環境対策など

に関する品質保証プログラムを作成し、これをオズミートを中心とする委員会が審査、

認定する制度が豪州でスタートした。これにより、認定を受けた者でなければ出荷す

る肉牛にグレインフェッドなどの表示ができないこととなった。このように、生産者

自らが品質保証に取り組む背景には、昨年のクロロフルアズロン残留問題を契機に、

消費者の信頼性を高める動きが強まった現れと言える。  



6.穀物生産、大幅回復の見通し

 冬作穀物の播種時期の5月に恵みの降雨でスタートした95年の豪州の穀物生産は、

その後も降雨に恵まれ、ほぼ順調に収穫が開始された。最新時点の生産見通しでは、

小麦は干ばつ被害で収穫が激減した94年から815万トン増加し、約1,705万

トン。大麦は約556万トンと94年(279万トン)からほぼ倍増となっている。

この見通しは、フィードロットにとっても明るい材料ではあるが、穀物の国際需給が

タイトなので、穀物価格は堅調に推移しており、安値が期待できるかは疑問である。



7.干ばつ被害で生乳生産量が減少(NZ)

 NZの94/95年度の生乳生産量は、前年を1.8%下回る920万トンであった。

年度前半は過去最高を記録した昨年を上回るペースであったが、夏季以降、主要な生

産地帯での低温と干ばつにより牧草の発育が不良であったため、生産量は減少した。

生乳生産の多くを輸出に仕向けている同国にとって、乳製品の国際市況が好転した時期

であっただけに、生産停滞は歯がゆい思いであったようだ。



8.対米輸出不振で牛肉輸出減少(NZ)

 NZの93/94年度の牛肉輸出量は30万5千トンで前年比3.5%減少した。そ

の理由は、米国市場が国内の生産増加により供給過剰であったことやNZドルが対米ド

ルに対し10%以上上昇したためである。対米輸出量が減少する一方、日本、韓国向け

輸出量は拡大しているが、依然として1ケタ台のシェアにすぎず、米国依存型輸出構造

からの脱却が強く求められた。



9.東南アジア向け生体牛輸出が急増

 豪州の94/95年度の生体牛の輸出頭数は約39万6千頭となり、この5年間で約

4倍となった。輸出急増の主な原因は、フィリピン、インドネシアのフィードロット産

業の拡大である。さらに最近では中国への肥育素牛輸出の展望も開けてきている。AM

LCでは、生体牛輸出は今後も拡大を続け、98年には66万7千頭に達すると見通し

ている。



10.組合系乳業メーカー、初の州間合併

 豪州では、飲用乳に関する諸規制の緩和が進む中、ニューサウスウェールズ州及びク

インズランド州最大の協同組合系乳業メーカー同士の合併計画が進められ、既に両組合

ともに合併案を承認した。商系大手メーカーが生産合理化とシェア拡大を狙いとした企

業買収を活発化させている中、これが実現すれば、組合系メーカーとして初の州間合併

となり、また、豪州最大メーカーの誕生として注目される


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