LIPC WEEKLY
【シンガポール特派員】 末國 富雄、横田 徹
タイでは、畜産物や養殖水産物の生産拡大を背景に、飼料原料価格が高騰した。こ のため、GATTで合意したミニマムアクセス数量5万トン余りを大幅に超過する約 45万トンのトウモロコシを、当初の関税率20%を7.5%に引き下げて輸入した。 トウモロコシの価格は、94年までキロ当たり3バーツ程度で推移してきたが、95 年は5バーツ(約18円)まで上昇している。国内生産量は350万トン程度である が、収益低下が災いして、作付け面積は年々減少してきている。 ASEAN各国では、国内の穀物生産の減少と畜産物消費の増加傾向から、飼料穀 物需給がひっ迫している。このため、国内飼料作物の生産促進対策を行いながら、畜 産や飼料業界の要請によって輸入枠を拡大するという厳しい選択を迫られており、例 外は農業をほとんど持たないブルネイとシンガポールである。
ASEAN域内での貿易関税化と関税率の削減を目指すアセアン自由貿易構想(A FTA)は、既に93年から実施されているが、96年1月からは非加工農産物も対 象とされる。関税化できるものと困難な品目リスト(HS6ケタ、下表)は、12月 14、15日にバンコクで開催された第5回ASEANサミットで最終的に決定され た。 ──────────────────────────────── 国 名 関税化品目 一時的除外 除外品目 合 計 ──────────────────────────────── ブルネイ ‐ 0 14 14 インドネシア 198 109 17 324 マレーシア 511 65 198 774 フィリピン 159 203 25 387 シンガポール ‐ 0 0 0 タイ 519 0 7 526 ────────────────────────────────
タイの鶏肉産業は、その輸出の大部分が日本向けであるが、中国の台頭によってこ こ数年、停滞を余儀なくされていた。このため、輸出業者間の競争が激化し、鶏肉産 業の系列化が進みつつある。その具体的な動向の1つは、種鶏事業が大手鶏肉生産事 業に統合されつつあることであり、結果として種鶏事業を持たない鶏肉生産業者は割 高な初生ビナを購入せざるを得ず、系列化の促進要因となっている。一方、GATT 合意によって韓国が冷凍鶏肉市場を部分開放しつつあることやEUへの輸出増加、さ らには国内需要が堅調なことなど、タイの鶏肉産業にとって好ましいニュースもある。
ここ数年、豪州から東南アジア向けの肥育用素牛輸入が急増している。最大の輸入 国はフィリピンでインドネシアがこれに次ぎ、この2カ国で豪州が輸出する生体牛の 9割以上を占めている。この原因の1つはGDP伸び率(94年)がそれぞれ4.2 %と6.5%と好調なため、都市部を中心に畜産物の需要が増加しているためである と言われている。フィリピンの素牛輸入量は、94年が11万頭、95年は最終的に は20万頭を超えるものと推測されている。一方、インドネシアは、94年が8万頭 弱、95年は17万頭を超えるのではないかと予測されている。豪州からはこの他に 乳製品も輸出されており、急成長する東南アジアは願ってもない市場となっている。
インドネシアのミルク・レシオは国内の酪農家保護政策の1つであり、乳業メーカ ーに、国産生乳受入量に比例する原料乳輸入を認めるものである。この政策はGAT T交渉過程でも廃止を求められた。しかし、この制度を廃止することは直ちに国内酪 農家の廃業を意味するとして、今後10年間に限り継続することが合意された。ミル クレシオは、国産乳1に対する許容輸入数量(生乳換算)として表示される。85年 以降95年7月まで、酪農振興の強化により2〜1.07の範囲で設定されていたが、 今年は国内消費の増加を受け8月以降2.9に改訂された。
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