LIPC WEEKLY フェタチーズの名称をめぐり対立−欧州−平成8年4月第237号

フェタチーズの名称をめぐり対立


    

【ブラッセル駐在員 東郷 行雄 4月4日発】  EU委員会は、このほど食品

の起源に由来する特定の原産地名や製法による食品を保護するため、その対象と

なる食品リストを閣僚理事会へ提案した。これが承認されると、フェタチーズは

羊または山羊の乳から製造したもの以外その表示をすることができなくなること

から、ギリシャを除く主要生産国であるデンマークなどは苦境に立たされている。



 今回、提案された農産物や食品のリストは319品目あり、例えば、"Parma 

ham"(イタリア産の生ハム)や "Lancashire Cheese"、"Orkney Lamb"(イギリ

スの特定地域を起源とする畜産物)などがその対象として含まれているが、これ

らの地域以外で生産され、この名称を使用している食品は今後名称を変更しなけ

ればならなくなる。



 この中で、特に大きな議論を呼んでいるのが、デンマーク産を中心としたフェ

タチーズの取扱である。



 フェタチーズは、比較的低脂肪なフレッシュタイプのチーズで、サラダなどで

カッテージチーズの代用として利用されているほか、中東諸国では肉に代わる重

要なたんぱく質源として位置付けられている。



 EU委員会は、提案の中で、フェタチーズをギリシャで生産されているように

山羊または羊の乳を原料とするものと定義付けており、デンマーク、フランス、

ドイツのように牛乳から生産されたものは、97年7月以降フェタチーズの名称

を使用してはならないとした。



  これに対し、既に20年も前からフェタチーズを生産し、中東諸国を中心に年

間7万5千トンを輸出しているデンマークは、名称の変更は消費者が混乱するば

かりか、乳製品業界への影響が大きいとして反論しているほか、EU域外では何

ら名称の使用が制限されないのは不合理であるとして提案を拒絶している。



  また、アメリカへの輸出に依存しているフランスのフェタチーズ生産者も提案

の撤回を求めるなど、反対の声も多くあり、簡単には決定に至らないというのが

大方の見方のようである。



  このほか、EU委員会は、特定地域に名前を由来するものであっても、既に一

般に広く普及しているチーズのうち、ブリー、カマンベール(Camembert de Norm

andieを除く)、チェダー、エダム、エメンタール、およびゴーダの   

6種類については、保護の対象としないことを併せて提案している。



  今後、閣僚理事会は、3カ月以内にこの提案に対し、承認あるいは否決かの決

定を迫られることになる。


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