ALIC/WEEKLY


シンガポール駐在員事務所 【末國 富雄、山田 理】


1.タイの冷凍鶏肉対日輸出量が大幅に減少
 タイ産冷凍鶏肉の日本への輸出が大幅に減少している。10月までの輸出量は、
対前年比17.1%減のおよそ7万9千トンに留まっている。日本の冷凍鶏肉輸
入は、米国、ブラジルからの輸入が増加している中で、タイからの輸入は、著し
く減少している。96年の日本の冷凍鶏肉市場において、タイはブラジルにも抜
かれ、第4位の輸出国に転落するのは確実とみられている。タイ産鶏肉は、加工
技術を生かした鶏肉調製品分野にシフトしつつある。

2.マレーシア、第7次5カ年計画を発表
 マレーシア政府は、5月、2000年までの同国の経済発展を図る上で、基本
的な指針となる第7次5カ年計画(マレーシアプラン)を発表した。これは、農
業を含む産業、教育および通信など、社会全般にわたるものである。農業分野に
ついては、商工業がさらに発展する中で、農業就労者数が減少すると予想し、生
産規模の拡大と機械化の推進による国際競争力の強化を通じた畜産物などの国内
食料生産の増大が必要であるとしている。

3.農産物の自給率低下に悩むインドネシア
 インドネシアで農産物の輸入が急増し、自給率が大きく低下している。95年
の食料品貿易の収支は、穀物だけで15億ドルの赤字となっており、96年は更
に赤字幅が拡大すると見込まれている。特に飼料用のトウモロコシや大豆の輸入
が急増しており、所得向上に伴う食肉需要が拡大しているためとみられる。この
ため、政府は、8月、トウモロコシの増産計画を発表したが、完全自給化は困難
であるとみられている。

4.シンガポール、WTO第1回閣僚会議を主催
 シンガポールで、12月、加盟127カ国の関係者約2千人を集め、WTO閣僚
会議が開催された。閣僚会議は2年に1度開催されることになっており、今回は、
WTOが95年1月に発足して以来、初の閣僚会議である。まず、ウルグアイラウ
ンドの合意事項の実施状況が点検されたほか、情報技術協定(ITA)、投資の
自由化などが主要テーマとして協議された。

5.タイ、飼料原料の関税割当制を撤廃
 タイ政府は、10月、97年の飼料原料穀物の輸入に関して、現行の関税割当
制度の撤廃を決定した。生産コストの上昇と競争相手国の台頭のため、冷凍鶏肉
や冷凍エビなどの主要品目の輸出量が今年はじめから大幅に減少しており、事態
解決に向けて国際競争力を回復させるための措置である。97年から大豆ミール
の関税は、10%(現行の1次関税率15%)に引き下げされ、96年に83万
トンであったクウォータは廃止される。トウモロコシは、端境期にあたる2月〜
6月に輸入したものに限り、関税と課徴金が免除される。

6.フィリピン、トウモロコシの輸入を開始
  フィリピン農業省は、3月、今年度の飼料用トウモロコシの輸入数量を40万
トンに設定すると発表した。同国は、東南アジアではインドネシアに次ぐトウモ
ロコシ生産量を誇り、これまで輸入実績がほとんどないだけに、インドネシアの
トウモロコシの輸入拡大とともに、東南アジアの飼料原料の輸入依存傾向を強く
印象付けた。

7.ASEAN、AFTAセンシティブ品目の自由化で合意
  4月にシンガポールで開催されたAFTA(アセアン自由貿易地域)評議会は、セ
ンシティブリストに記載されている未加工農産物(一部畜産物を含む。)の取り
扱いについて、2010年を関税削減の目標達成期限とすることで合意した。ま
た10月、ジャカルタで開催されたASEAN経済閣僚会議では、調整がつかなかっ
た米、砂糖についても、同様の期限とすることで決着した。しかし、関税引き下
げ目標に例外を認めるなど、調整色が前面に現れ、農産物交渉の困難性を改めて
印象付ける結果となった。

8.マレーシア産鶏肉の薬品残留問題が沈静化
  マレーシアでは96年後半、国産鶏肉の薬品残留問題が大きな社会問題となっ
た。問題の薬品は、ヒトとの健康に悪影響を与えるとの疑いもあり、その使用が
8月に禁止されたが、禁止後の9月に実施された検査においても残留が認められ
たことから、この影響で消費は減少し、価格も前年と比較して低い水準で推移し
た。消費者の食品の安全性に対する認識を改めて印象付ける結果となった。しか
し、11月、政府による安全宣言を受けて、事態は沈静化に向かっている。

9.シンガポール、国内、海外で拡大する農業生産
  シンガポールは、国内で消費する食料の90%以上を外国からの輸入に依存し
ている。しかし、国内の農業生産がなくなったわけではなく、国内6カ所の農業
団地で、野菜、鶏卵、牛乳といったものから養殖魚や鑑賞用植物まで多岐に渡る
品目が生産されている。政府は、2000年までに生産高を現在の2倍に拡大す
る意向であるが、同時に、国営企業が、中国上海での世界最大級の養豚事業への
投資を明らかにするなど、極めてシンガポール的な方法での農業生産の拡大、食
料の安定確保への努力が行われている。

10.拡大するベトナムの畜産
 改革、開放政策により順調に経済発展を続けているベトナムでは、生活様式の
変化に伴う畜産物需要の高まりを受けて、その生産量は近年、急速な拡大を見せ
ている。ベトナムの畜産は、飼料原料の豊富なメコンデルタを基点とした南部に
広く展開している。政府の積極的な外資導入政策によって、海外企業の飼料工場
や近代的な養鶏場の建設あるいは事業拡大が図られているほか、ビナミルクなど
国営企業も経営内容を強化しつつある。

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