LIPC WEEKLY
【デンバー駐在員 堀口 明 6月19日発】 96年農業法では、従来の不足 払い制度に替えて、政府との契約により生産者が7年間にわたって一定の補助金 を受け取ることができる制度が創設された。USDA(米国農務省)は先ごろ、 契約締結期間の中間地点における生産者との契約締結が順調に進んでいるとの発 表を行った。 96年農業法は、米国農業制度の中核として60年にわたって実施されてきた 不足払い制度を廃止し、市場価格の動向にかかわりなく7年間にわたって生産者 に一定の補助金を交付する事業を創設した。 従来の不足払い制度の下では、補助金受給の条件として、減反の実施や作付け 農産物選択の制限などの規制が課せられていた。しかし、新制度ではこれらの規 制がなくなり、生産者は、政府との契約(生産柔軟化契約、Production Flexibi lity Contract)により環境対策の実施など幾つかの事項を順守することにより、 農産物選択の自由が与えられ、生産実績に応じて、市場価格にかかわらず、7年 間にわたり一定の補助金を受け取ることができることになった。 USDAは生産柔軟化契約の締結期間を5月20日から7月12日までと定め ているが、先ごろ、各地方事務所からの報告を基に、中間時点である6月中旬の 契約締結状況をとりまとめ報告した。 この報告によれば、200万戸近い契約有資格農家のうち、66万戸の農家が 契約を済ませている。契約締結の進ちょく状況には、地域によって差があり、農 作物の作付け作業などを完了した地域や天候条件により農作業に入れない地域で は、50%近くの契約が行われている。 一方、農作業を行っている最中とみられる地域での契約率は10%弱と非常に 低くなっている。しかし、これらの地域においても、地域を管轄するUSDAの 地方事務所は、生産者からは事業参加意志を伝える連絡があると報告しており、 生産者の関心が高いことが示されている。USDAは、全体として約3分の1が 契約を済ませていることから、契約締結の進ちょく状況は順調であるとみている。 関係者の間では、事業の内容からみて、最終的な参加率は相当高くなるものと考 えられている。 USDAは、今回の事業では参加手続きが簡素化されたことにより、生産者か ら好評を得ている旨を報告している。また、7月12日の契約締結期限は間近で あるとして、生産者に対して早めの行動を呼びかけている。なお、今後の7年間 を対象としたこの契約は、期限後には追加が認められておらず、この機会を逃し て契約をしなかった場合は、補助金を受け取ることができなくなるとされている。
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