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【シンガポール駐在員 末國 富雄 11月21日発】 シンガポールの消費者 団体(CASE)は、先週、国内のスーパーなどで販売されているLL牛乳の中 に“フレッシュ”という表示があるのは事実に反するうえ高値販売につながると、 国内乳業会社や輸入会社に改善を要請した。指摘を受けた各社ともラベルの変更 を表明しており、来年1月ごろまでには次第に是正される見込みである。 CASEの指摘は、「ロングライフ」(LL)牛乳は、長期保存のため超高温殺 菌(UHT)処理を加えられており、生乳とは異なるものとなっている。これに “フレッシュ”という言葉は適切でないし、シンガポールでは低温殺菌牛乳が“ フレッシュ”な牛乳として高値で販売されている中で、乳業会社が、このような 混同しやすい単語を容器に印刷しているのは、LL牛乳を高値で販売するためで はないのか」というものである。 実際に、あるスーパーの売り場では、要冷蔵のチルド牛乳が12種類、LL牛 乳が8種類ほど並んでいた。1リットル当たりの価格は、値幅が大きいものの平 均すると、殺菌牛乳が2.8ドル(1ドル=約80円)、LL牛乳は1.8ドル程 度である。LL牛乳の中でCASEが指摘する“フレッシュ”と書かれたものが 3種類あり、いずれもシンガポールの乳業会社が生産、あるいはシンガポールの 会社の委託によってパック後、輸入されたものである。豪州やNZからの製品に はこのような表示は見当たらないし、「還元乳」などとシンガポール製では表示 されていない内容が容器に書かれたものもある。 シンガポールの牛乳消費水準は東南アジアの中では最も高い。年間一人当たり の消費量は、日本の消費量に近い30リットル程度と推定されている。このよう な需要の高さとゼロ関税を背景に牛乳や乳製品は日本をも含む世界各地から輸入 されており、種類も非常に豊富である。チルド牛乳は遠くオーストラリアやタイ から空輸されている。 ただ、CASEの指摘には、UHT=LLという誤解が含まれている。日本の 場合でも9割以上がUHT処理されているが、LL牛乳としては流通していない。 滅菌処理したうえでの冷蔵流通という最も安全な方法が取られている。生乳の汚 染度に定評のある東南アジアではほとんどがUHT処理されていると聞く。した がって、シンガポールの店頭にもUHT処理されたチルド牛乳が並んでいるはず である。 しかしながら、CASEのような消費者団体の活動は、少なくとも畜産物に関 して、東南アジアでは珍しいものである。シンガポールの活発な消費活動がこの ような団体に活動の場を与えているといえよう。昨年8月には、高騰した豚肉価 格について流通業者に抗議し、政府には沈静対策を要請した実績もある。 CASEのトー・シー・キア会長は、「大手の会社が是正に積極的でないと後 が続かない」と業界全体の対応を要請しており、今後は、食品販売法に基づき 「UHT」あるいは「殺菌」という単語を大きく明瞭に表示させるよう働きかけ を行うとしている。
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