LIPC WEEKLY


アジア向け農産物輸出の強化委員会が発足


【シドニー駐在員 石橋 隆 10月17日発】 豪州連邦政府は、今後最も農
産物需要の拡大が期待されるアジア諸国への輸出強化を図るための委員会を発足
させた。ジョン=ハワード首相を代表とするこの委員会は「豪州をアジアのスー
パーマーケットに」をスローガンに、官民一体となって農産物の輸出促進に取り
組むこととなった。

 アジア諸国は、豪州にとって地理的にも近いことから伝統的に農産物市場とし
て重要な位置を占めてきた。最近は人口増加、経済発展が著しく、将来さらに巨
大な農産物市場に成長することが期待されるアジア諸国は、今後の豪州農業の生
命線といっても過言ではない。

 先月、連邦政府はアジア諸国をターゲットとした中長期的な市場戦略を検討す
るため、ジョン=ハワード首相を代表とする委員会を発足させた。この委員会は
「豪州をアジアのスーパーマーケットに」をスローガンに掲げ、アジア諸国の多
様な食品ニーズに応え豪州農産物がアジア市場で確固たる地位を築くことを目的
としている。

 この委員会のメンバーには、ハワード首相、ジョン=アンダーソン第一次産業
大臣などの主要閣僚に加えて、スーパーマーケット関係者、食品加工メーカー、
貿易関係者、生産者団体、研究機関などからも幅広く人材を集め、官民一体とな
ってこの課題に取り組むこととなった。

 委員会設立に当たってハワード首相は、農産物の輸出振興は連邦政府の重要な
政策課題の一つであることを強調し、行政サイドも一丸となってアジア向け農産
物輸出の推進に努力することを明らかにした。

 今後、この委員会では次のような課題に取り組むこととしている。

@ 輸出農産物の品質向上と安定供給
A  生産、加工、流通の各段階のコスト削減による競争力強化
B  輸入相手国のアクセス改善
C  需要動向に関する情報収集と市場分析
 
  第一次産業エネルギー省(DPIE)によれば、アジアの食品市場は今世紀末
に6,850億豪ドル(60兆円)に達すると見込まれており、そのうち少なく
とも12%に当たる830億豪ドル(7兆3千億円)は輸入に依存すると予想さ
れている。

 また、アジアの食品市場は年間160億豪ドル(1兆4千億円)ずつの拡大が
見込まれているのに対し、人口約1千8百万人の豪州国内市場は年間6億豪ドル
(528億円)の伸びしか期待できない。このため、DPIEでは豪州農業が将
来にわたり持続的な発展を遂げるためには、アジア市場で確固たる地位を占める
ことが最も重要であり、また、これによって農家、加工業者、流通業者のすべて
が利益を享受できるとしている。


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