LIPC WEEKLY


タイ、飼料原料の関税割当制度撤廃へ


【シンガポール駐在員 山田 理 10月17日発】 タイでは、生産コストの
上昇と競争相手国の台頭により、冷凍鶏肉や冷凍エビをはじめとする主要輸出品
の輸出量が大幅に減少している。この事態解決に向けて、政府は、生産コスト削
減による競争力回復につなげるため、飼料原料の関税割当制度を撤廃する方針を
決めた。これにより、国内の飼料原料生産者への影響は避けられないものと思わ
れる。

  現地報道によると、タイ政府は、関税割当制度の撤廃を含む来年の飼料原料の
輸入政策を14日の定例閣議で採択した。 

  タイでは、経済成長の減速が大きな問題となっており、冷凍鶏肉や冷凍エビを
はじめとする主要輸出品が大幅にその輸出量を減少させている。生産コストの上
昇による競争力の低下が主要因とみられており、政府は、何らかの対策を講じる
ことを迫られていた。

  先月開かれた商業省、農業協同組合省、大蔵省を所管する3大臣の会合におい
て飼料原料の関税割当制度について撤廃を含め見直しを行う方針が確認された後、
国内の飼料作物生産者の保護策について、検討が進められていた。

  現行の関税割当制度は、世界貿易機関(WTO)ルールに係る自由化の一環と
して、昨年から開始されたばかりである。主要品目のうちで、最も輸入量の多い
大豆ミールについては、今年83万トンの輸入枠が認められおり、畜産団体に
45%、飼料製造業者に35%、輸入業者に20%が振り分けられている。これ
ら83万トンに課される1次関税率は15%となっているが、これを超える場合
には、119%もの2次関税率が適用される。

  97年からは、関税割当制度は撤廃され、関税も見直される。大豆ミールは、
現行の関税15%から10%に引き下げられる。ただし、輸入者は、畜産団体と
飼料生産者団体の直接需要者と輸入業界団体に限定された。これらの輸入者は、
国内の大豆油工場からの大豆ミールを全量買い上げることが義務付けられ、国内
で生じる大豆ミールに対する需要が確保された。

  トウモロコシについては、国内生産農家への影響を押さえるため、輸入期間を
2月20日〜6月30日までに限定した。この期間に輸入されたものに限り、関
税および課徴金が免除される。また、国内の適正取引価格が設定され、取引価格
が下限を下回る場合には政府が介入し、価格を維持する。

  さらに、大豆ミールやトウモロコシの価格、国内生産量や輸入量を適正に把握、
管理するため、商業省と農業協同組合省が合同で委員会を設置した。

  なお、閣議決定を受けて、今後、細部の調整が引き続き行われる予定である。

  今回の見直しでは、国内の飼料作物生産者に対する配慮が多く見られるものの、
国内生産者が大きな影響を受けることは避けられないと思われる。

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