LIPC WEEKLY
【デンバー駐在員 堀口 明 10月17日発】 米農務省(USDA)は、10 月11日、環境保全促進事業(EQIP)の規則提案を行った。この事業は、 96年農業法に基づき実施されるもので、今年度1億3千万ドル(約143億円)、 その後の6年間は、毎年度2億ドル(約220億円)の予算が配分されている。 EQIPの事業は、予算の2分の1を畜産農家の環境保全対策に使用すること としており、畜産環境対策に重点の置かれた事業であるといえる。この事業では、 USDAによる環境保全対策に関する情報の提供や生産者への指導、助言が実施 されるとともに、USDAが州政府の協力の下に、水質、土壌、その他の面から 環境保全対策の実施が必要な地域を特定し、生産者、州政府、連邦政府の資金に より、環境対策のための施設を建設する事業などが実施される。 政府は、生産者と5年から10年の契約を結んで事業を実施するものとされて いる。事業の実施に当たっては、環境保全計画が作成され、ふん尿処理施設、土 壌保全施設建設などの環境保全対策が実施されることになる。 家族経営農家向けに実施される事業であるふん尿処理施設、農薬管理施設、土 壌保全施設の設置事業では、事業費の75%までの助成を受けることができると されているが、1農家当たり、毎年度の補助額は1万ドル(約110万円)、事 業実施期間の通算額では5万ドル(約550万円)という補助金受給の制限があ る。 環境保全対策に関する情報や指導、助言を受ける事業については、農業経営の 規模による制限は設けられていないが、施設の建設を行う事業については、大規 模経営を補助対象から除外している。 このため、大規模経営の範囲をどのように決めるかが大きな関心となっていた が、USDAは今回の提案ではこの点について、大規模経営の定義に関するガイ ドラインを示すに留まり、地域の実状を反映して事業を柔軟に実施するため、そ の範囲の決定を州政府に委ねるとしている。 なお、この事業を管轄するのは、商品金融公社(CCC)であるが、実際の事 業の実施については、生産者と関係の深い天然資源保全局(NRCS)や農家サ ービス局(FSA)が指導や確認の事務を行うことになる。 USDAは、11月25日までの間、今回の提案に関する意見などの受け付け を行うこととしている。また、USDAは、この事業とともに、土壌保全保留計 画(CRP)や湿地保全計画(WRP)など一連の環境保全対策事業について生 産者などの意見を聴取するため、10月11日から同21日にかけて、全米54 カ所において公聴会を開催している。 この事業の実施により、米国における畜産環境問題についての情報が収集され、 その実態がより明らかになるものと思われる。
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