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米国農業団体、ファストトラックの延期に失望


【デンバー駐在員 本郷 秀毅 11月20日発】クリントン大統領は、議会から
の十分な支持が得られないとして、ファストトラック法案の下院での投票を延期す
る旨を表明した。これに対し、ファストトラック法案を支持していた農業関係団体
は、強い失望感を示すとともに、引き続き、同法案の議会通過を支持していく旨を
表明した。

 クリントン政権は、3年前から失効しているファストトラック通商交渉権限の更
新を行うため、関連法案を議会に提出するとともに、その支持を求めて、活発な議
会工作を行っていた。

 ファストトラック通商交渉権限は、議会が大統領に対して通商協定に関する交渉
権限を付与するとともに、通商協定案に対する議会からの修正要求を制限し、政府
提案の関連法案を一括審議して賛否を問うこととするものである。今回の法律案で
は、北米自由貿易協定(NAFTA)をチリにも拡大し、さらに米州自由貿易圏
(FTAA)の形成を図ることが目的とされていた。

 しかしながら、共和党議員からの十分な支持にもかかわらず、大統領の出身母体
である下院民主党議員からの十分な支持が得られなかったため、クリントン大統領
は、ファストトラック法案の下院での投票を延期せざるを得ない事態に追い込まれ
た。

 このような事態に対し、農業関係団体、とりわけ輸出の拡大を目指す畜産関係団
体は、強い失望の意を表明した。

 全国肉用牛生産者・牛肉協会(NCBA)は、米国が貿易協定に係る交渉から閉
め出されているうちに、競争相手国が新しい市場との貿易協定の交渉を進め、既存
市場の拡大をも進めるであろうとして、今回の決定に対して失望の意を表明した。
さらに、ファストトラックは単なる手続きだけを意味するものではなく、米国が貿
易協定に係る交渉を行い、世界の農産物市場に対して公正さと、アクセス拡大をも
たらすリーダーであり続ける能力を有するかどうかを決議しようとしているもので
あることを付け加えた。その一方で、NCBAは、今後とも、ファストトラック通
商交渉権限の付与に対し、強い支持を続けていく旨を表明した。

 また、全国豚肉生産者協議会(NPPC)は、同法案の議会通過の遅れに深い懸
念を示すとともに、可能な限り、同法案の議会通過を後押しする旨を表明した。

 政府やNAFTAの支持団体が、来年、再度同法案の通過に向けて努力すると表
明しているものの、98年には議会の選挙を控えており、反対派である労働組合は、
意見を共有する議員への強力な支持に動くと考えられるため、今年以上に、同法案
を通過させることは困難になるとみられている。


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