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99年の10大ニュース シンガポール駐在員事務所 【伊藤 憲一、外山 高士】


1.マレー半島の豚すべてにワクチン接種へ(マレーシア)
 マレーシア政府は3月、まん延するウイルス性脳炎の対策として、マレー半島の豚
すべてにワクチンを接種することを決定した。一方、マレーシアから生体豚を輸入し
ているシンガポールでは、日本脳炎発生農場からの豚の輸入を中止するなど、その対
応に追われた。この後、マレーシア政府は新型のニパ・ウイルスの発見などを受けて、
その対応を感染豚のいる農場の豚の全頭廃棄へと切り替えることとなり、同国の養豚
産業は壊滅的な打撃を被った。

2.生体豚の輸入を全面禁止に(シンガポール)
 シンガポール政府は3月、マレーシアでまん延するウイルス性脳炎の対策として、
マレーシアなどからの生体豚などの輸入を、全面的に禁止することを発表した。同国
内のと畜場職員がウイルスに感染し死亡したことなどが原因であるが、シンガポール
では、国内で消費されている豚肉の多くをマレーシアからの生体豚輸入に頼っていた
ことから、その後の供給不足が懸念された。

3.EU基準に対応した改善が進むタイ鶏肉処理施設
 タイの鶏肉処理加工業者は、処理施設などをEUが求める輸出基準に改善するため、
総額で10億バーツ(1バーツ=約2.8円)の投資を行ったとしている。同業者な
どでは、今後の安定した鶏肉輸出を図るためには、EU市場の確保は重要であると見
ている。なお、12月7日から、これらの施設を検査するために、EUの検査官がタ
イを訪問している。

4.豪州から豚肉を空輸で手当て(シンガポール)
 ニパ・ウイルスの進入を阻止するため、生体豚の輸入を禁止したシンガポールでは、
一時的に市場から豚肉が消えるなどの影響が出た。量販店などでは中華料理などに欠
かせない豚肉の需要を満たすため、新たな輸入先となった豪州からの冷蔵豚肉を販売
している。しかし、これらの豚肉は空輸されることから、価格は従前に比べかなり割
高となっている。

5.牛肉の関税を免除(インドネシア)
 インドネシア政府は、98年12月から2ヵ月間、牛肉および生きた牛の輸入にか
かる関税を免除すると発表した。これは、同国における通貨危機の影響により、豪州
などからの肥育素牛の輸入が滞っていたためで、クリスマスなど年末からの需要期に
供給不足を起こさないようにするのが狙いであるが、輸入牛肉を中心として上昇の続
いた牛肉価格の引き下げ効果も期待されていた。

6.豚肉小売店に冷蔵陳列棚が義務化(シンガポール)
 シンガポール政府は、11月1日からすべての豚肉小売店に、冷蔵陳列棚の設置を
義務化した。マレーシアにおけるウイルス性脳炎の発生に端を発し、豚肉流通は、こ
れまでの温と体(おんとたい)流通から冷蔵肉流通へと、その形態が大きく変化する
こととなった。小売店では、冷蔵陳列棚の設置にかかる経費を全額自己負担すること
となっているため、将来に向けての投資であるとしながらも、その扱いに苦労してい
る。一方、消費者からは衛生的になったと好評を博している。  

7.冷凍鶏肉の免税輸入措置を中止(フィリピン)
 フィリピン政府は8月、特別に許可を受けた免税店で販売されている冷凍鶏肉の輸
入を一時中止し、豚肉やその他の食肉調製品についても、同様に実施する方向である
と発表した。同国では、ガット・ウルグアイラウンド(UR)合意に基づきミニマム
アクセス(MAV)枠を設定しているが、MAV枠外で免税輸入された鶏肉などが、
一般のスーパーマーケットなどでも販売され、小売価格を下落させたのが背景となっ
ていた。同国では、大統領の基本政策でもある貧困対策の1つとして今後とも、農業
振興を強めていくものとみられている。

8.タイ酪農振興公社、民間への売却入札は失敗
 経営が行き詰まっている国営企業である、タイ酪農振興公社(DFPO)の民間へ
の売却入札は、DFPOへ出荷していた酪農家やDFPOの労働者などの反対により、
当初予定されていた3月の入札が延期されていた。その後、5月に2回の入札が実施
されたにもかかわらず、いずれも結果は失敗に終わった。このため、政府はDFPO
の売却を強行するのか、それともDFPO職員の生き残りをかけた運営を継続させる
のか、早急な判断に迫られることとなった。
 
9.関税の引き下げを懸念するタイ畜産業界
 タイ政府は、8月10日から、国内産業の生産性向上およびタイ製品の輸出競争力
を高めるため、世界貿易機関(WTO)で合意した期限よりも前倒しして、家畜用飼
料などアイテムの関税を引き下げた。この措置は、輸入原材料のコストダウンを目的
としたものだが、関係者は関税引き下げの急な動きに対し危機感を募らせており、そ
れ以外の関税を決定するまでには、かなりの曲折が予測される。

10.GM食品のラベル表示を計画(タイ)
 タイ農業省は10月、遺伝子組み換え(GM)食品のラベル表示を検討しているこ
とを発表した。国内で栽培が禁止されているGM綿花が北部地域で発見されたことや、
ドイツ向けの小麦粉の輸出拒否を受けたことなどが原因である。しかしながら、加工
食品などの検査体制がまだ確立していないなど、多くの課題が残されており、同国政
府も、公的検査認証期間の設置を計画しているなど、その対応に追われている。


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