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NZDG、ピーク時の生産調整を検討


【シドニー駐在員 幸田 太 7月27日発】ニュージーランド(NZ)最大の乳
業メーカーであるニュージーランド・デイリーグループ(NZDG)は7月21日、
南島における生乳の過剰生産に対しペナルティを徴収する計画を発表した。

 この計画は、生乳生産のピーク時の一定期間内において生産量の上限を定め、そ
れを超えた分に対して1リットル当たり30NZドル(約1,500円:1NZドル=約
50円)のペナルティを課すというものである。その上限は、過去3年間で連続して
10日間最も高い生産量を上げた期間における1日当たりの平均生産量を基礎に定め
られる。

 さらに、NZDGは、この計画に生産者の賛同が得られれば、現在行っている南
島での新規参入や規模拡大への規制を撤廃することも併せて公表しており、南島の
みならず北島の酪農生産者の興味も引いている。

 南島酪農生産者組合の代表であるフェリマン氏は「今回の計画については、規制
撤廃が前提であれば賛成であるが、生産者の混乱を招く恐れがあるので、十分な説
明と議論が必要である。」と述べ慎重な対応を取っている。

 NZDGは、今後、生産者との討論を重ね、最終的には今年度末の株主投票によ
り決定し、来年年明けからの実施を目指したいとしている。

 今回の計画の背景には、南島の南部を集乳地域とするアナンデール工場が、近年
の急激な生乳生産量の増加に伴い、処理能力を超える状況が1シーズンで10日以上
連続して発生し、約400km離れたカレンダバイ工場への転送を余儀なくされた経緯
がある。このためNZDGは、今後も生乳生産ピーク時に運搬費用などのコスト増
が恒常化することを危惧し、今回の計画を生乳生産の平準化の方策として打ち出し
たものとみられる。

 北島のシェアミルカー(自ら牧場を持たず酪農経営を行う者。NZの生乳生産の
50%を担う経営形態)によると、北島では、この数年、土地の値上がりが著しく、
自らの目標であった農場購入を断念せざるを得ない状況となっており、酪農経営を
将来的に続けようと思う者は、その土地の安さから南島への興味が非常に高いとし
ている。

 その言葉どおり、NZにおける南島の酪農は、北島に比べると、気候条件が厳し
いが、近年、安価な農地価格により広範な牧草地の確保が容易に行えることから、
北島から流入してきた酪農家により、多頭化と効率化が図られている。

 NZ全体の乳牛328万9千頭の飼養頭数のうち、北島は262万頭(80%)、南島は
66万9千頭(20%)であるが、1戸当たりの飼養頭数は、北島が212頭に対し南島
330頭、農地面積では、北島が84ヘクタール、南島が130ヘクタールと飼養頭数、面
積ともに南島が上回っている。

 今回の案が、工場の効率運用を図るNZDGと規模拡大路線を目指すNZ酪農生
産者を巻き込み、成長著しい南島の酪農乳業にどのような影響を与えるか、今後の
動向が注目される。


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