ALIC/WEEKLY


EU、牛肉等の原産国表示を9月から義務付け


【ブラッセル駐在員 山田 理 8月3日発】EUの農相理事会は7月17日、牛肉
などに原産国表示を義務付ける規則案について欧州議会の修正要求を受け入れるこ
とで合意した。これにより、農相理事会と欧州議会の共同審議が終了したこととな
り、9月1日の表示開始に向けて大きく前進した。

 欧州議会が7月上旬に可決した修正要求は、@当該牛肉が得られた牛の「カテゴ
リー(去勢牛、未経産牛、若齢雄牛など)」の表示は義務付けない、Aひき肉につ
いては、複数の生産国の牛肉を用いて製造できることとし、牛個体の生産国とひき
肉の製造国が異なる場合には、牛個体の生産国を表示項目に加えるとの2点であっ
た。

 「カテゴリー」の表示に関しては、表示項目を必要以上に増やすことはコストの
上昇につながるとして食肉業界が強く反発しただけでなく、表示コストが生体牛価
格に転嫁されることを恐れた一部の生産者団体も反対に回っていた。

 牛肉などに関する原産国表示は、牛海綿状脳症(BSE)の発生が完全に終息し
ていない中で、消費者から強く求められている。今回の農相理事会の決定には、こ
れ以上牛肉の表示義務付けの開始を遅らせることはできないとの政治的判断が働い
たものとみられている。7月から議長国となったフランスのグラバニ農相は、欧州
議会の修正要求について、表示規則を望ましい方向から遠ざけるとの見方が農相理
事会の大勢を占めたことを認めている。

 EU委員会のフィシュラー委員(農業/農村開発/漁業担当)は、「農場から食
卓まで一貫して牛肉の由来を明確にする上で、重要な一歩となる」と今回の決定を
評価したが、ひき肉に関する修正については、EU域内での単一市場としての広域
流通を阻害しかねないとの懸念を隠さなかった。

 今回採択された最終規則の概要は、以下の通り。

 第1段階として、2000年9月1日から、EU域内で牛肉(生鮮、冷蔵、冷凍の枝
肉および部分肉:輸入肉を含む)および牛肉製品を販売する者に対し、次の項目の
表示を義務付ける。

 牛個体と牛肉の関連を示すコード
(同規則に基づく個体識別システムが整備された後は、個体識別番号)

 と畜場の所在国名および認証番号
「Slaughtered in ○○(国名),番号」

 食肉加工場の所在国名および認証番号
「Cutting in ○○(国名),番号」

 第2段階として、2002年1月1日から、上記項目に牛個体が生産(出生)、肥育
された国名が追加される。同一国内で生産(出生)、肥育、と畜された場合は、
「Origin(原産地):○○(国名)」と簡略表記できる。

 ひき肉に関しては、第1段階で牛個体と牛肉の関連を示すコードおよびひき肉を
製造した国名を表記するほか、第2段階で牛個体の生産国とひき肉の製造国が異な
る場合には、牛個体の生産国を表示することが求められる。

 また、輸入肉では、表示を義務付けられるすべての項目について、十分な情報が
得られない場合は、「Origin:Non-EU(EU域外)」または「Slaughtered in ○○
(国名)」といった簡略表記が認められる。 

 EUでは、かつてないほど食品の安全性に対する関心が高まる中で、牛肉の原産
国表示が、消費者の牛肉購買行動にどの程度影響を与えるか注目されている。


元のページに戻る